半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『知的複眼思考法』苅谷剛彦

オススメ度 70点
ちょっと重め度 60点

一言でいうと「Critical Thinking」の概説本。
スタンフォードとかハーバードではなく、現在オックスフォードの教授だと。

東大からノースウェスタン大学へ留学し、東大大学院教育学研究科教授を経て、オックスフォード大の教授。

教育学の専門家であるが、「自分の頭で考える」というのはどういうことか?
「自分の頭で考えなさい」と言われた人は、どうすればいいのか?というところが思考の出発点。

社会人にとって「考えること」の重要性。
また、日本の学校の受験教育は「正解があり、なおかつ正解が一つだけ」という形式に特化しているので、自ずと思考がそのように限定されてしまうという弊を述べていた。
批判的な読書や、他人の意見に批判しよう、というファーストステップにおいては、相手の欠点や欠陥を探すことを「批判」と思いがちだけども、それは思考力を鍛える半分であって、考える力をつけるためにはもう一歩すすんで「代案を出す」ところまでいく必要がありますよね、ということも強調されていた。
概念化、ビッグワードを使うことによる思考停止の危険、問題→思考展開のなかで混同しやすい因果関係と擬似相関の違い、とかそういうのも書いてある。

えーと、僕は自分で考える人なので、この人の言うことは、反論なくごもっとも、と思って、逆に何一つひっかかるところなく読み終えてしまったわけなんですけれども。

ビジネス書にあるような、スキームとか、思考のフレームワークを表にしたものとかなく、平易な文で書かれてあり、いわゆる即効性には乏しいとは思う。
だいたいまあ「考えること」に、即効性など求めてはいけないのだけど。
でも、本書がターゲットにしている「考える力をつけたい人」は、これくらいの文章も読めないんじゃないのかなあ。

遅刻せずに来ている子らに、「遅刻はいけませんよね」とか説教しているような矛盾は、少し感じた。
胃腸が弱い人にこってりした料理があわないように、ちょっと本読むの慣れてない人にこれ読んでもらうの躊躇するなあ。
コンセプト的には職場の新人に読んでほしい内容だよなとは思うが、多分、この本をスイスイ読み通せるか……危惧してしまうな。
そんな難しいこと書いてあるわけじゃないんだけど、論理展開に誠実であろうとする文体のせいで、ちょっと「重い」。