オススメ度 60点
「知性」ときたか…度 80点
知性を磨く― 「スーパージェネラリスト」の時代 (光文社新書)
- 作者:田坂 広志
- 発売日: 2014/05/15
- メディア: 新書
えらいコンサルタントの人。
東大卒でパテル記念研究所、ダボス会議のGACメンバー、世界賢人会議・ブダペストクラブの日本代表就任。
わーすごい。わーえらい。
本はね、結構重要なヒントに満ちているとは思う。
単純に与えられた問いに答えを返すことは「知能」。
そうではなく、問題を見出す力が「知性」。
問題解決能力よりも問題作成能力が重要というのはビジネス本でもよく言われていることではある。
- 答えのない問いに、答えを出すことは難しい。
- 割り切りをし、腹をくくるしかない
- 知性そのものへの根底の力は精神のエネルギー
- 固定観念を捨てよう
- 知恵と知識は違う。「知性」といわれる能力は長年の職業経験、現場経験からしか身につかない人間としての高度な能力
- 垂直統合の知性が大切、7つのレベルの思考力をバランスよく身につけて磨く必要がある
- いままでは山登りの戦略思考、これからは波乗りの戦略思考が大事(外部条件の変動が大きいので瞬発力が必要)
ビジネスにおけるポイントをうまくコンパクトにまとめていると思う。
* * *
ただ、「知性を磨く」というタイトルの大きさはどうかと思う。
知性とは何か?
知性をどのように使うか?
という命題は、ビジネスにおける限定された問題ではなく、哲学や自然科学、芸術も含めると非常に広範囲で、簡単に答えが出せるものではない。
この本では疑問も葛藤もなく知性について語られる。
この本は関心領域がビジネスに限定されているので、「知性」はビジネスの中で最適解を出すというかなり限定された問いに答える能力にすぎない。
そこは少しモヤモヤする。
『ビジネスにおいて知性を磨くには』みたいな言い方ならまだ納得はできるんだけどね。
この人はビジネスマンとしてはかなり偉い人で、そこでは一家言があるのもわかる。でも、
アカデミアの最高峰の人とか、最先端研究とかしてる人にぶっ殺されちゃいませんか…と心配になる。世界賢人会議に出ているから、大丈夫?……うーん、そうか。うーん。
「知性」というのは要領良く箇条書きにポイントをまとめることですか?
自分に知性があることを所与のものとして著述するようなスタイルを取る時点で知性の欠如を表してはいませんか?と、やや意地悪く問いたい気はする。
まあVUCAの時代にアートに答えを求めたりするパターンとか、
ビジネスマンが苦手な哲学や教育の分野から精神攻撃を仕掛けてくる内田樹翁に比べると、フェアなのかもしれない。
ビジネス本としては結構いいことを言っているだけに、「思てたのと違う」人が量産されそうなタイトルがいささか残念だ。