- 作者: 矢部太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2017/10/31
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話題から乗り遅れて購入。なんかのテレビ番組で取り上げられたのがきっかけ。
でそれを読んだ1ヶ月後くらいに大家さんが亡くなった記事が出た。
なんだか妙なシンクロ感。僕がKindleで購入ボタンを押したあの時は、大家さんはまだ生きていたんだ。
読み返してみた今日、この秋にはもう大家さんはこの世にはいない。
芸人さんの処女作とは思えない達筆なヘタウマ感。
作者矢部太郎の控えめな性格、しかし業界特有のラフな感じと、大家さん界隈の静かな生活の
対比、行ったり来たりの面白さ。(こういう二つの世界の対比って、文学などでよくあるパターンなのだが、なんていうんだっけ)
おそらく素封家の令嬢であったのだろう大家さんのハイソっぷり。
東京のお金持ちが使う店(新宿伊勢丹)・宿(京王プラザホテル)。でも今は晩年をゆっくり生きている。たしかにこういう人に対して、トゲのない売れない芸人さんって、ぴったりハマるのかもしれないなあと思った。寄り添う力があれば、誰かの役に立つのだ。
別に生きることに目的なんかなくたっていいと思うけど、人生の晩年にこういう心の交流ができて、それが皆の目に触れる作品になる、というのも人生冥利につきる、と思う。
私も医者なんぞやっているのだが、患者さんの中に妙に上品な老齢の御婦人はしばしばいらっしゃる。なにかっていうととらやの羊羹を持ってこようとする人とか*1
それぞれに人生経験を積み重ねているので、人生の先輩としての凄みのようなエピソード、誰でも一つや二つもっているものだ。クソ忙しいなかで診察しているとゆっくり話せないのだけれど、時々そういう話に出くわす。
*1:東京のとらやだ。ややこしいことに地元にも「虎屋」という和菓子店はある。