- 作者: ピーターナヴァロ,赤根洋子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2016/11/29
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- 作者: ピーター・ナヴァロ
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
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中国が今や経済大国であり軍事大国なんだけれども、実際今後の世界はどうなるのか?ということを論じた本。
想定しているのはアメリカ人の読者。著者は有名な『中国脅威論』論者。
今まで公開されている中国人民解放軍の足跡から、中国政府と軍の戦略の考えを推測する。
「相手の立場に立って考える」ということをすれば中国の考えることは見えてくるよ。というのが筆者の論点。
読んでいて感じたのは、中国軍の方が、自衛隊よりも忠実に「専守防衛とはなにか」ということを真摯に追求しているように思われたことだ。もちろん中国軍は専守防衛だけではなく、例えば南沙諸島を占拠したり、格下の相手にはアンフェアな手も辞さず戦略目標を遂行する。地域覇権国家になるため、きちんとPDCAをまわしている。
そして仮想敵国アメリカに対しては、きちんと「相手の嫌がること」を研究してその準備をしている。鍵となるのは非対称戦略。いくらアメリカの空母が最強であろうが、一隻数十億ドルの空母を一発500万ドルもしないミサイルで飽和攻撃したら制圧することは可能だ。
卑怯と言われようと、明白な劣勢の中で勝つための手段を、きっちり遂行するためのシミュレーションを怠らないのが、中国軍の強さだろうと思う。
仮想敵国アメリカを想定することにより、中国軍は圧倒的な強さも身につけられたし、例えば日本と戦うという場合に、ある程度いろいろな戦術的な選択肢をとりうるだけのカラフルな軍事力をもつようになった。
対して、日本はどうか。
わたしも日本の自衛隊は決して弱くはないと思うが、そもそもきちんと相手をみているのか、相手の手筋を読んでいるのか、という観点で心配ではある。
今の日本人は(いや昔からかもしれない)夜郎自大的であれ、謙虚であれ、相手をみない傾向がある。「自分に勝つ」つまり克己ということばかり気にする。相撲とかでも「自分の相撲がとれました」みたいなことばかり言うでしょ?戦争というのは自分の相撲が取れても、相手に負けてしまったら意味がないのである。どんなに不本意な戦い方であったって、勝たなきゃ。
太平洋戦争にしてもそうだった。アメリカを仮想敵国としながら、相手の研究もせず(した研究班は「どうしたって負けます」という結果を参謀本部に突きつけたのだが黙殺されたというサイドストーリーもあるが)夜郎自大的な価値観に溺れ自滅した。
でも、今の日本人は、その教訓も全く生かせていない。「日本すごい」「クールジャパン」とかいって客観性を失っているようでは、実力もいかせないだろうと思う。