- 作者: ジョージ・フリードマン,George Friedman,櫻井 祐子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/06/23
- メディア: 単行本
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今回のは邦題が「激動予測」であるが、原題は "Next Decade"つまり、次の十年間に何が起こるか、ということを、地政学的な制約を主に政治経済軍事的なIssueを論じている本。非常にシンプルなタイトルで、むしろこっちのほうがいいように思う。
なんか、”「影のCIA」が明かす近未来パワーバランス”といわれると、ちょっと落合信彦的な胡散臭さがでるので、いかがなものかと思うのですけれどもね。
面白いのは100年予測よりも10年予測の方が難しいということ。
100年だと、それなりに確率論的な事象は収斂するから、大まかな流れについては、イレギュラーなイベントによる影響が吸収されてしまう。ゆえにむしろ予測しやすいのだが、10年という短期的な予測は、個人の資質とか、偶然の出来事などにかなり作用されるから。ま、中心極限定理だわね。
内容としては、まあ、非常に納得がいく。
100年予測では全く触れられていなかったアフリカ諸国の問題にも言及があるし、中東情勢、オーストラリアなど、世界の各地域への言及が章だてで、100年予測より詳細にレビューされていました。未来予測というか、現在の状況分析の俯瞰という意味でも非常に役に立つ。
序文で、今回の日本の地震と関連付けて、日本は「地震型社会」だと論じていて、それも面白かった。これは地震がよく起こる社会、というわけではなくて、漸進的に社会変革が進むわけではないが、ギリギリまでエネルギーが蓄積するが、変革するときにはものすごくドラスティックな変化が起こる、ということらしい(明治維新や、戦後など)。なるほど。ちょっと前に感想を書いた『緊急提言―日本を救う道』(http://d.hatena.ne.jp/hanjukudoctor/20111210)で、いろいろな処方箋はすでに提示されている。地震を契機にこういう処方箋が次々に実施されると、地震型社会の面目躍如たるところなのだが。