オススメ度 20点
「うけるー」度 90点
一切の陰謀史観が嘘だとは言わないが、冷静に考えれば無理がありませんか……という一冊。
101歳で死んだデヴィッド・ロックフェラーが、フリーメーソンを牛耳り、世界を支配していたのだ!
「魔王」ロックフェラーが死に、彼の支配が弱まっているから、世の中が今大きく動こうとしている!
メディア・リテラシーの教科書としてちょうどいい一作だと思う。
すべてがロックフェラーの意思のままに動いているはずがないじゃないか。
だいたい世界を自由自在に動かす強大な権力を持ち、他人を意のままに従えているという船瀬氏の描写の一方で、
息子達の相克と称しているけれども、何人かはロックフェラー家を離れているし、どう考えても家庭の中さえコントロールできているとは言い難い。
石油利権を牛耳ってきたロックフェラーが死んだから世界は脱石油、脱アメリカに向かい、再生エネルギーに舵を切っているのに、日本は取り残されたままだ、とか(今の石油投げ売り相場はどのように考えるべきなんだろうかね。あ?ロックフェラーが死んだから?そうなのかもね…)
氏は言う。
闇のイルミナティがアメリカのメディアを牛耳り、世界に戦争を引き起こしていた。
ところがロックフェラーが死んだあと、影響力が低下したから、戦争をやりたがっていたヒラリーはアメリカ国民に支持されずトランプが大統領になったんだと。
……んー。ということはトランプは旧来のアメリカの支配層に反旗を翻した庶民の英雄ってこと?
トランプがやっている政治は、「フリーメーソン」に支配されたアメリカ中心の世界秩序を変革するってこと?
陰謀論の欠点は、世界の出来事を、黒白(善悪)をはっきりと区別しようとするがゆえに、悪の敵は善、善の敵は悪みたいな区別の仕方をせざるを得ず、論理的な整合性が保てないことだ。
単純な二分法では世界はおしはかることはできない。
「悪の黒幕」のような存在を仮想しなくても、世界の成り立ちは理解できるし、逆に多くの人間の思惑が複雑に絡み合い、黒白の濃淡は限りなくグレーであるのが世界のありようであるとは思う。ただ、そういう世界のありようはわかりにくいし、あくまで地道に情報を集めないと未来予測もできない。陰謀論によって世界を見ると、白黒つけやすいのは間違いないので、不安感を捨て去ることができるのだと思う。
見過ごせないのは、ただ、表に出てこない世界に対する意思は、この妄想史観は極端すぎるが、全くないわけではないことだ。
だから、真実はこれと通史の間にある。
ただ、その世界は、こっちよりなのか、あっち(妄想史観)のどちらに近いのかは、その人の考え次第なのだと思う。
確か船瀬俊介は『買ってはいけない』にも書いていましたね。
私は医師なので、医療や自然科学に関する部分の真贋はある程度わかる。
ま「トンデモ」と断じてもいいような代物で読むに耐えない。
よくもこういう考えを醸成するまでに至ったもんだ。
怖いもの見たさで、講演とか聴いて見たい気もする。
例えば『カイジ』とかの福本伸行漫画とかで、念の為イカサマとかも仕込んで必勝の体勢に持ち込んだ敵が、カイジの仕掛けにはまって、億単位の勝負で、足元を掬われて負けるシーンとかあるじゃないですか。
そんな時に、「あれ?あれ?」みたいになって、なんかぐにゃーと世界が歪む感じ?
あんな感じを、講演を聴くと味わえるような気がする。
自分の常識からかけ離れたことを、確信を持って語ってくれると思うから。
ホラー映画などを観にいく感覚で観に行きたい。