半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

酒見賢一『墨攻』

墨攻 (新潮文庫)

墨攻 (新潮文庫)

別に映画みたりしたわけではないんですが、昔漫画でやっていたので、本家返りといいますか、そんな感じ。Book-Offにて100円。

 漫画は、色々膨らませて書かれていたのだということを、原作を読んで初めて気がついた。本は、漫画の最初のエピソードのところで完全に完結。
 そのために余分に登場人物を生きながらえさせもしない。
 この本では痛々しいまでに恬淡で、人の死に方がチェスのようだと思いました*1

 『後宮小説』もそうでしたが、この人の話は、描かれているその世界に自分も飛び込みたいなあとは思わないタイプのもので、引き込まれはするが、こんな世界住みたくねえ。でもリアルで、ある意味現実よりもリアルなところがある。
 読了後、本を閉じてただただため息がでる、そんな読後感です。

 しかし、表紙・文中のイラストは南伸坊氏のすっとぼけたタッチの絵で、最初その内容とのギャップに、違和感を感じたのですが、読了後の感想としては、むしろこのイラスト、結構大事。リアリティーのない絵柄なのに、むしろ本文のリアリティーを増すことに成功している。
 僕の中では南伸坊氏は、昨今はただの顔マネのおっさんで、やたらゆるゆるな対談をする人という印象があったんですが、やっぱりこの人すごいなあ。

*1:ちなみに魁男塾やドラゴンボールのようなジャンプ的な物語では敵と味方は将棋のように動く