- 作者: 開高健
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1960/06/28
- メディア: 文庫
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開高は読んだことがなかった。ためしに古本屋で購入。
これが初めて読む作品ということになるが、これがはじめての開高体験として適切な本だったかどうかはわからない。でも、『裸の王様』は芥川受賞作らしいので、いけないということはないだろう。若い頃の作品らしい。
これは、中編が4つ。
なるほどこういう味かあ、と。現実に即して書かれるような小説なのね。描写は、丁寧で、リアリズムを感じさせます。私小説のクオリティで、社会性のある小説を書いている。一言でいうと、そんな感じ。あまりこういうジャンルには詳しくないけど、「社会性」という点では、自分の知っている中では城山三郎っぽい読み味かなあと思いました。ま、城山は、名前のわかっているような人が主人公であるが、開高は無名の人間が主人公ではあるけれど。
開高さんは晩年の冒険作家みたいなイメージが強かったので、勝手に村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』に出てくる、一緒にハワイに行く少女の父親の、才能がないけども冒険作家みたいなイメージで作家的延命をはかっている小説家を、勝手に開高のイメージとだぶらせていたのです。
中国の土民、流民のようなものをかいた『流亡記』というのが、僕の心には一番きました。現実に即した作品ではなく、観念的に書いた作品ですが、歴史小説といった体ではないし、むしろこれはある種SFに近いと思った。一番時代性が希薄だから、今読んでも違和感がないからかなあ。今度は晩年の、椎名誠の本歌みたいな開高を読んでみようと思う。