半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

"ザ・ニュー・スタンダード" ハービー・ハンコック

(もしくはasin:B0009N2U5Qasin:B0000070PB)
 「いわゆる」ジャズスタンダードというのは、昔のミュージカルの曲をジャズでやっているわけです。それってすなわち、ポップスをジャズに引き写しているわけじゃないですか(じゃないですか話法)それなら、それならね、同じように、現在のポップスの曲をジャズでやればいいんじゃない?それってジャズじゃない? 
 ……というコンセプトで作られたアルバム。
 このアルバムは、そういう、現在のジャズ界の新たな里程標となるアルバムのはずです。
 で す けれど ……

 今にして思えば、このアルバムコンセプトはしかし、ジャズの現況を踏まえ、正確な時代認識に基づく当時としてはシュアーなものだと思う。それが、打ち出したコンセプトの卓抜さほどの卓抜なアルバムにならなかったのは、結局ハンコックって人は、マイルスのような、自分のコンセプトに沿って人をモノのように動かす、といった悪辣さがないからではないでしょうか。ハンコックが理解していたほどには、メンバーにハンコックのコンセプトがちゃんと浸透していたのかどうか。
 それにしても、もう、このアルバムが出て10年も経つんだと思うと感慨深いものがあります。今では、Brad Mehldauとかの方が、同じ切り口でやっても、切れ味が鋭いような気がしますなあ。
 いや、アルバムのクオリティとしては申し分ないんですよ。当代最高の演奏であることはわかるんですが、なんか、のっぺらぼうに聴こえるのは、僕の耳が悪いんでしょうか(多分悪いんでしょうね)。
 ビバップが、全ての曲が同じに聴こえるのと同じくらい、いや、それ以上に、イマドキのジャズはどの曲でも同じに聴こえてしまう。抽象的すぎるからかなあ。どんなメロディーをモチーフにしても、そこからひねってひねってひねってやると、結局は全部似たような雰囲気になってしまうというか。
 例えば、ドラゴンボールで言えば、最初の頃はキャラの描き分けもわかりやすかったけど、ドラゴンボールZになったら、どのキャラも結局のところムキムキマンで、今ひとつ弁別しにくい、っつーか。挙げ句の果てにスーパーサイヤ人、そしてサイヤ人ver2、ver3になってしまったら孫悟空も、ベジータも、孫悟飯も同じに見えてしまうがな。見分けつかへんがな。
 そんな感じなんですよ。


 ところで、メガネオタクの僕は、このジャケットで映っているメガネは一体どこのブランドなのだろうかと覆う。Oliver peopleかなあ。

追記:それにしても、このアルバムですら、はてな言及は僕以外には一人だけかあ。はてなにはジャズの人があまりいないというのもありますが、やっぱりジャズってポピュラリティがないのね。