- 作者: 三崎亜記
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/12/20
- メディア: 文庫
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となり町と戦争が行われる話。
そのまんまいえばそうなんだけど。
頭で考えたらその一語で終わるところを、現実になるとどうなるかということを描いている。日本の役所の制度に触れたことがある人なら皆このシステムの非人間さを知っているから、いかにもジョージ・オーウェル的な事態は起こりかねないという直感を持つことが出来ると思う。
僕たちは戦争世代ではないし、そもそも日本国内で自決組織の集団同士が内戦を行った歴史そのものがない。ゆえに戦争の日常性に関して圧倒的に無知であり、内戦というものに対するリテラシーは圧倒的に低い。ホテル・ルワンダなどが、我々の共感を呼び起こしにくいのはそのせいだ。
僕たちが知っている『戦争』は、日本で行われた半世紀前の戦争と、他国で行われた戦争だけだ。前者は確かに自国の話ではあるが時代は違う。後者は現代の話であっても、よその国の話。だから、『自分の』物語として受容出来るものではない。
地域振興のために戦争を行うという設定は、いかにも日本的な悪夢だ。もちろんこの話は虚構ではあるが、僕らの国の、今の話という点では、一番ぼくらのリアルに近いんだ。