- 作者: 奥田英朗
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/04
- メディア: 単行本
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最初にこの人の作品を読んだのは延長戦に入りました (幻冬舎文庫) だった。土屋賢二のようなとぼけた書き味であるという思い出だけが残っている。
ある企業で起こった放火事件。警察による捜査を中心に描かれる。主人公となりうる人は複数おり、その人達の視点を錯綜させながら事件はだんだん核心に近づいてゆく。そういう形式であるがゆえに、たとえば物語が一方向の舞台に向かって描かれているような感じがなく、陰影深く思われる。もっとも、この人の書く世界は、そんなに愉快なものではない。
様々な負のエネルギーが玉突き状に登場人物達に作用し、その連鎖はそれぞれの人生を少しずつ変えてゆく。純粋な観察者は誰もいない。そしてこの訳のわからない事件の果てに、行方をくらます登場人物が哀れだ。この登場人物は、直接的には罰せられるべきことを為していないのに、玉突き事故の被害者のように巻き込まれてしまうのだ。