半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『人に頼む技術』

オススメ度 90点
ジョブズ氏も…の帯は、むしろ逆効果度 100点

・何かを成し遂げるには誰かの力が必要。
・頼みごとをすることは苦痛を伴う(人にものを頼むことは結構なストレス)
・自発的な気持ちで熱心に相手を助けようとするとき、人は良い気分になるが、他者にコントロールされていると感じると、良い気分は消え去ってしまう。主体性の感覚を持たせつつ、仕事をしてもらうことが要諦。

一個人で生きている限り、人に物をあまり頼まないで過ごすことはまあまあ可能だ。
消費者という立場は、お金を払って、感謝をせずとも、自分の欲しいものを手に入れることができる。
*1
でも、チームでことをなす仕事をする限り、人にものを頼まなければ仕事はすすまないし、お互いに感謝を伝えたりしあわないと、社会というのは回っていかないのだ。特に、上の立場の人は。
だから「人にものを頼む技術」はまわりまわって、マネジメントスキルの一つだと思う。
マネージャー業務は、人に仕事を割り振ることが仕事になる。
職場のエース的な地位にある人はプライドも高いため、リーダー業になって、人に仕事を振って任せるということが、普通の人以上に苦痛になる、というパターンは強そう。エースかならずしもリーダーならず。

アメリカの本なので、少し日本と行動様式は違うところもあるかもしれない(もっとも、現代日本、特に若い人はずいぶんグローバル標準化されてきたようだが)。が、「ものを頼む」という一事に対して、網羅的に書かれていておもしろかった。
行動経済学的な要素も大きい。
なんども読み返していいと思う。

以下、備忘録。
(一部省略していますので、興味あれば本を読んでください)

  • 助ける型と助けられる側のあいだに「わたしたち」という感覚をつくりだせるかどうか。
  • 人は世間で思われるよりもずっとお互いを助けたがっている。
  • 鎮痛剤を使うことで、被験者は日常的に体験している拒絶への反応に対する感受性が低下することができる。
  • 下方社会比較、確実性、自律性が脅かされる時に人は強いストレスを感じる。
  • 頼みを受けると、プレッシャーを感じる。
  • ドア・イン・ザ・フェース(対面のお願いは断りにくい)、フット・イン・ザ・ドア(一度お願いを断った場合に、人間関係を維持したいと思っている場合は、次のお願いは断りにくくなる)
  • 認知的不協和をうまく使う。好き嫌いと頼みを受ける・断るに対して(詳細略)
  • ギバーは2割、残りはテイカーとマッチャー。
  • 依頼に対する4種類の反応:明確な拒否・沈黙・消極的な承諾・積極的な承諾。ギバーはほとんどの場合積極的な承諾を行うが、こういう人はまれ。
  • 内発的動機付けには驚くべき効果がある。例えば、報酬・脅威や監視、期限・プレッシャーで条件つけさせられると内発的動機付けは失われる。逆にそういう条件をとりさると、お願いは受け取られる可能性が高い。
  • 個人的返報性・関係的返報性・集団的返報性(詳細略)
  • 必要な助けを得るための4つのステップ:(詳細は本文で)

*1:もちろん、この考えかたは明確に間違っている。消費者は正当な商取引な行為によって商品(もしくはサービス)を受け取っているから、感謝などする必要はない、という考え方は、お店で「いただきます」とか言わないとかいう狂った習慣につながる。別にそれでもいいけど、それは世の中のあり方について、明らかに無知すぎる考えだ