半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『僕の見た「大日本帝国」』西牟田靖

僕の見た「大日本帝国」

僕の見た「大日本帝国」

十字架と共存する鳥居、青い日の丸、ロシアの鳥居、見せしめにされた記念碑、落書きだらけの慰霊塔……かつて日本の領土だった国々に残る、その不可思議な光景の理由は? 知られざる反日親日のリアルとは?―忘却なのか、禁忌なのか? 埋もれてしまった「あの時代」を、戦争を知らないからこそまるごと見つめ直してみたい。だから僕は「大日本帝国」を踏破してみた。

Web記事で、作者西牟田氏の活動をみて興味をもったので、作者で検索してでてきたこの本を読んでみた。
一時期にはAmazonでも新刊ベストセラーに入ったりした、随分と話題書だったようだ。
賞もとったりしたらしい。

しかし、いってみればただの辺境旅行記だ。極めてふつーの。
何より、政治的な偏向が入っておらず、大日本帝国の「夢のあと」を平成に若者が何の事前情報も持たずに訪れている、といった体裁になっている。

ナイーブな若者が、ある国では、敵意をあからさまにむけられ、ある国では物珍しがられ、ある国では友好的な態度を向けられる。

こうやってひとかたまりにすると、かつての大日本帝国の威光、というよりは、見えてくるのは戦後の日本との関係性なのだろう。
総括するのは難しい。
だからこそ、この本が価値をもつのだろうね。
そう、戦争のことも、戦後のことも、一括りにしてまとめてはいけないということだ。

だからこその「一次情報」としてのこの本が人気を博したのだろう。

この本の台頭はネトウヨの台頭とか、そういう時期にも重なっている。ブログの登場と、いわゆる「物書き」以外の人たちが文筆の世界に大量に流入してきた時期でもある。
この当時にこの本がどのような論争に巻き込まれたかは、正直あまり覚えていないが、結構な波頭に立っていたような気もする。
それもまた、それはそれで、一つの「戦後」だとは思う。

ちなみに、きっかけになったweb記事は
www.hotpepper.jp
でした。