古生物学者、妖怪を掘る―鵺の正体、鬼の真実 (NHK出版新書 556)
- 作者: 荻野慎諧
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2018/07/06
- メディア: 新書
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古生物学者、妖怪を掘る 鵺の正体、鬼の真実 (NHK出版新書)
- 作者: 荻野慎諧
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2018/07/13
- メディア: Kindle版
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新書ってやはり短時間で手っ取り早く雑学が頭の中にインストールされるよな。
古生物学者である筆者が、今までに培った考古学・分類学的な知識をそのまま、妖怪・怪異譚などの資料に広げてみたら……というコンセプト。
われわれの分野でいえば、内科医や精神科の先生が、過去の歴史上の人物の疾病はなんだろうか…と論じる本に近い。
文系の分野に理系のテクノロジーを持ち込んだらどうなるだろうか、という思考実験。
「鬼」の話から。
鬼って、角があって怖いというイメージがあるけど、そもそも自然界では、角がある動物って基本的には草食動物だよねー、というところから話が始まる(目からウロコ!)
その他、一本足のおばけ、といわれる怪物は、おそらくクジラの骨格などではないか、1つ目小僧なども、イルカ・クジラの骨格ではないか…など、突飛な出発点であるけれども、着地に至る思考プロセスは堅牢そのもので、確かに古生物学者の考察なんだなあと思った。
怪異譚というのは、自然科学のない時代に、それでも正確な描写をしようとした努力の跡なのではないだろうか…というのが作者の結論。
その他、スプリッター(Splitter)とランパー(Lumper)という用語が気になった。
どっかで使ってみよう。いや…44年生きてきて引っかからなかった語彙だからなぁ…使えるかしら*1。
化石を分類する研究者にも流派があり、大別して種を分けたがる細分主義者(スプリッター)とばらばらに記載されていた種をまとめたがる一括主義者(ランパー)がいる。
*1:例えば、ジャズイディオムの世界においては、チャーーリーパーカーはスプリッターであり、マイルス・デイヴィスはランパーであった、とか。スプリッターは微分的思考で、ランパーは積分的思考であるとも言える