半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

ボクたちはみんな大人になれなかった 燃え殻

ボクたちはみんな大人になれなかった

ボクたちはみんな大人になれなかった

ボクたちはみんな大人になれなかった

ボクたちはみんな大人になれなかった

なんかWebで人気だそうでなんとなく購入(Kindle版)
主人公はいわゆる成功した業界人。仕事も順調、人間関係も、そしていい女も蛇口をひねるように手に入る生活を送っている。Wanna beの女子と寝て「そうなの君もがんばんなよ」みたいな余裕な生活。

だけど、自分が何者でもなかった時代、かっこ悪い青春時代。
自分を守ることで精一杯だった。そのぶん近くにいる人を守っている余裕なんてなかった。そんななかお互いに社会の中であがき、傷つけあった異性の話。別に主人公が一方的に悪いわけではないが、自分だけが夢にたどり着いたせいで、後ろめたさを感じているんだけど、たまたまFacebookで、その元カノを見つけて、そしてなんとなく友達申請してしまったところから回想の1日がはじまる。

んー。なんつーか。Facebookめ。
これは作中主人公の感想(マーク・ザッカーバーグめ…的な言辞)と同じではあるのだが。

筆致は、あちこちに印象的な言い回しが光る、クリスプで、オシャレクソ野郎的な文体。
糸井重里のエッセイの文体に近い匂いを感じられた。
構造の堅牢さよりは瞬間最大風速性の高い文章。

「賢治はずっと東北の田舎町で人生の大半を過ごしたのに 、銀河まで旅したんだよ 」車窓から差し込んでくる朝の光に目を細めた彼女が 、カ ーテンを半分閉めながら言う 。 「きっと 、妹を一緒に連れて行ってあげたかったんじゃないかな 」そしてボクの目を見てこう続けた 。 「どこに行くかじゃなくて 、誰と行くかなんだよ 」

マ ーク ・ザッカ ーバ ーグがボクたちに提示したのは 「あの人は今 」だ 。

「でも人生に真面目に取り組んだら犯罪くらい犯しちゃうと思うの 。運転する人はゴ ールドカ ードじゃないし 、車にキズがあるのと一緒で

そういうのも含めて、いろいろ痛い。だがそれは自分の痛さでもある。
そりゃみんな悶絶するわ。

昔なら、下積み芸人を支える糟糠の妻、という話になったのではないかと思う。あえて、こういう希薄な関わりにしたせいで、圧倒的な普遍性を獲得したのかなあと思った。私の人生はこれとは全然違うが、やはり未熟ゆえに相手を気遣う余裕のなかった過去の恋愛を思い出し、過去の罪に対して心の中で懺悔をした。

っていうか、そうか。俺も主人公と同じ43歳になったんだった。うわっ、痛〜。