- 作者: 角田光代
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/11/09
- メディア: 単行本
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図書館に置いてあったのを読む。
ええ話やね。
しかし、この話の影の主役はおそらく「負け犬vs.勝ち犬」ではなくて、同調圧力の強い日本の社会なのだと思う。いわゆる「スクールカースト」という言葉は極度に閉鎖的な学校というシステムのなかでの特に顕著な現象をさすものではあるが、では社会に出たところで本質的には何一つ変わりはないのだ。二つの時代を交錯して描くことでそれが浮き彫りになっている。
女性の方の細かい心理描写には私はいつも感服してしまうのですが、綿谷りさにしても、角田にしても、こうした極端に同調圧力の強い社会にて感じられる疎外感は、女性作家における定型的なモチーフになっている。たとえば明治の作家における「近代的自我の不安」と同じように。
同じ社会を生きていても、男性より女性の方が関係性に対して敏感であるし、同調圧力も強いので、このような人間関係の閉塞に曝されやすいのは確かだ。
ま、そんなのはどうでもいいとして、中編の長さであるが起伏もはっきりしているし、非常に注意深くていねいに書かれている。同じ筋立てでごっつ救いのない話にすることも可能であったとは思いますが、希望的なしめくくりで、読後感がよかった。いい話ですね。