半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『ニーティングライフ』

WebとかSNSでCMをみて、続きが見たくなり読んでみる。
作者は多分中堅どころのベテラン。絵が上手い。

いろいろあって会社を辞めてニート生活をすることにした主人公。
この主人公のニート計画の作り込みが、大変すばらしい。
素晴らしいかどうかはわからないけども、ここの「人と合わないための生活設計」が大変緻密でありまして、このあたり「僕の考えた〇〇」感があって
「おおー……」となる。

この漫画、とても構成が綺麗でありまして、

このニート生活導入部の緻密なニート描写:起
ニート生活だったのに、隣人が…という変化が訪れる:承
しかし急転直下危険が訪れて:転
最後に主人公に大きな変化が訪れる:結

それぞれ描写が丁寧かつプロッティングとその配分が非常にキレイ。
ODD taxiのストーリーテリングのうまさに通じるものがある。

上下巻でさらっと終わるのもいい。
難をいえば、非常によくでき、細部まで凝ってよくできているストーリーテリングだけれど、
それだけに、モヤモヤみたいな後に残るものがあんまりない……かなあ。

イケズな東京

ちょっと前に中野信子女史が書いていた京都の悪口本を読んだが、その流れでこの本に。
halfboileddoc.hatenablog.com

(直接は関係ないけれども京都の「イケズ」が面白かったので)

青木淳さん、井上章一さんのコラム・対談本。

コロナ禍で東京一極集中の是正が叫ばれるが、事はそう単純ではないと井上氏。私たちの東京への思いは複雑で、長尺の歴史から捉える必要がある。そう、京都から東京に天皇が移り住んだ時代まで遡って。『京都ぎらい』の井上氏に対するのは、二都を往復する気鋭の建築家・青木氏。二度の東京五輪大阪万博など、古今東西の都市開発のレガシーについて論じ合う。

内容は多岐に渡る。
系統的な話というわけではなく、いわゆるランドスケープを主題にすえた印象論のようなコラムのような感。
もちろんそれぞれの分野での泰斗である両者の切り口で、いろいろ面白い話だった。

強いテイクホームメッセージがあるわけではなく、経験豊かなおじさんのこぼれ話を聞いているような風情の本。
肩肘張らずに読める。(その分何かが強く残るわけではない)

以下、備忘録、

  • 今の都市景観はブルジョワの覇権の裏付け。
    • かつての天守閣=権威の象徴。今でも本社ビルは経済合理性というよりは見栄の要素も大きい
    • 東京に本社を置くメリットとデメリット
    • 昔は商家は2階までしか作ることを許されなかった(商人風情が武士を見下ろすのは失礼という考え)。明治維新後 三井が建てた兜町の銀行=天守閣風の建物
  • ヨーロッパでは都市建築の外観は都市の公共性に奉仕するものだとされている。制限が大きい。東京大阪ではなんでもあり。
  • 省庁の地方移転にまつわるアレコレ。官僚は都内からでることをいやがる
  • 京都=「みやこ」という地元の人の感覚はあるけど、帝都は結局のところ東京か
  • 昔はオリンピックは万博の余興でしかなかった。万博の会場が技術コンクールの場ではなくなっていくにつれ、万博はだんだん展示物よりも展示へウェートをおくようになった。
  • 戦前は神宮球場プロ野球は使えなかった(学生は使えた)。当時は職業野球が見下されていたため
  • 昔は当たり前だった「水上生活者」
  • 神戸女学院のヴォリーズ建築
  • 平安神宮の池

『徹底抗戦都市モスクワ』小泉悠著

これ、多分オタキング岡田斗司夫チャンネルで紹介されたので読んでみた。

ウクライナ戦争関連の著書で名を馳せた小泉悠さんが、無名の時の本(なんだと思う)。なので、名で売れるわけではなく、トピックで売れるために、わかりやすく、漫画仕立てにしていていて読みやすい。実にサブカル的な読み味である。

ロシア・モスクワ。今は「侵略国家」みたいなイメージがあるし、まあそれはそうなんだけれども、
そもそも国の成り立ちから、侵略されつづけた経緯があり、自己防衛的なメンタルが好戦的な性格の淵源になっているわけで。

防衛施設とか、軍事博物館とか、街の構造をそういう観点で見直すと、また違ったふうに見えるよね。ということでなかなか趣深い本だった。

ローテクに戻る Apple Watchのリストバンド

だいぶ前から 時計はApple Watchを愛用している。(なんとSeries 1からみたいだね。1→4→7→9)
halfboileddoc.hatenablog.com

この前久しぶりに 会合とか学会とかあって、高級腕時計をつけたりもしたが、まあ誰も気づいてくれなかった*1
Apple Watchの体活動計機能(特に歩数)で運動量管理をしているから、Apple Watchを外すのも結構不便。

指輪型のデバイスもチェックしたがやはりスマートウォッチ並の機能はない。
で、そういう時計の場合は仕方なく反対側の前腕やや深めの見えないところにApple Watchもつけたりする。
虚飾の極みやん?馬鹿馬鹿しい。
ま、それくらい自分にとってApple Watchは手放せないデバイスってこと。

 * * *

今回はApple Watchのバンドの話。
純正以外も含め、いろんなバンドは試した。
メタルっぽいやつは金属アレルギーになりかけ、ウーブンナイロンに帰着していた。

で、Series6か7で出た「ソロループ」が最近お気に入りだった。
これは、伸縮性の高いバンドで、いわゆるアジャスターがない。
ゴム輪のようなもん。伸ばして装着しピタッとおさまる。
出た時は「ほぉ!」と思った。
もちろん腕の太さに合わせないといけないので、自分の腕の太さを計測してそのサイズを注文する、という格好になる。
www.apple.com

確かに、装着するのは簡単。
そして機構がシンプルな分装着感もノイズがなく快適。
Apple製品は本質的に「シンプル志向」なので、実にAppleらしいと思う。

ただ半年くらい経つと、このバンド、どうしてもゆるむ。
ジャストサイズだったのがブカブカになる。
通常使用だとそこまで問題はないのだが、ジョギングやハイキングはブカブカだと心拍数がうまく計測されない。

結局、従来通りのスポーツループに戻してしまった。

 * * *

Appleのシンプル志向は素晴らしいと思う。
が素材にはまだ課題があるのだろう。

あるいは、例えば熱を加えたりとか、なんらかのサイズを戻すTIPSがあればやってみたい。
もしくは、ちょっと伸びたループを、ちょっとサイズの大きな人にあげる循環システムとか?
身につけるものだから汚いか……

*1:そんなもんだよね

『辺境の老騎士 バルド・ローエン』

風の谷のナウシカ」の重要なキャラクター「ユパ様」*1のイケおじぶりに憧れた人は少なくあるまい。
老いた登場人物。
まあ言ってみれば、古典的名作の「ドン・キホーテ」だって50歳くらいの老騎士が主人公ではあったな。

剣の達人・バルド・ローエンの道中もの。
軽い気持ちで読み始めたが、思った以上に面白かった。

  • 剣の達人なので、随所に戦いがあり、活劇ものとして面白い
  • 老騎士の人生に関連した陰謀などが挟まれ飽きさせないプロッティング
  • 割と食通な剣士(このあたりは池波正太郎っぽい)が道中さしはさまれる食い物の描写がやたらうまそう
  • ファンタジーものなのだが、緻密な設定が背後にありそうだが劇中ではさらりとしか触れられないチラリズム
  • 作画は緻密

老人の枯淡の境地みたいな感じでファンタジー世界をゆるやかに旅するだけなのだが、飽きさせない工夫が随所に。
考証と設定、衣食住の描写が緻密で、さらりとしたストーリーだけれどもかなり力が入った作品だなあ、と思う。

それにしてもバルド・ローエン 58歳。
剣客商売の秋山小兵衛 初登場 59歳
磯野波平 53歳
風の谷のナウシカ ユパ様 45歳

うわっ、ユパ様はもう年下なんだ…なんだかなあ。*2

参考

剣客商売も、老境をひしひしと感じる味わい深さがありますね。

ファンタジー✖️グルメといえば、このダンジョン飯が嚆矢といってもいいんだろうな。

*1:なんせ「様」ついてますもんね

*2:今、私は49歳。経営者的には「若手経営者」なんて言われるんですけど、もう折り返しどころか2/3以上すぎているわけですよ

「ほとんどない」ことにされている側からみた社会の話を。

「そう、書かなきゃいい、言わなきゃいいんである。働きづらさや生きづらさという、ある立場の人から見た世の中の不均衡。それを口にしなければ世の中は平和だし、誰も怒らない。けれどいったん構造に物申し始めたとき、世界は一変する。」
性暴力被害、痴漢犯罪、年齢差別、ジェンダー格差、女性蔑視CM、#metoo...多くの人がフタをする問題を取材し、発信し、声をあげ続けるライター・小川たまか初の著書

今でこそ、ジェンダーについては、ずいぶん話が進んで、むしろ弱者男性おいてけぼりやないの?とか、
そういうことさえ言われる時代ではある。
けど、やっぱり社会における給与面での待遇や性的規範意識の点では男性と女性の間にずいぶんと差がある。
そういう構造的な状況で苦境に在る人の気持ちとか状況を丁寧に掘り下げた話。


RIFCR 虐待を受けた子供への初期対応
幼い頃に嫌な目にあった人が、少し成長してからまた被害に遭うというケース
ジェンダー・年齢差別(特に女性の場合の若い女性の価値が大きいと一方的に見なされる問題)
ステレオタイプへの決めつけ
性被害、ルッキズム
性交渉における「合意」とは

私は優位とされている男性。
優位な立場がどんどん変わっていく時代の人間で、正直耳が痛いことも多い。
けど、この10年くらい(特にコロナ禍になってから)社会はずいぶん変わったように思う。

それがよりよい社会に近づけばいいのだけれど、そこんとこはまだわからない。
それに大正デモクラシーから昭和の軍国主義ナチスドイツのように、自由と繁栄から一転して、極端に人権の制限された時代が来たこともあるわけで、21世紀が今の延長線上で、我々がいま当たり前に享受している自由、というものが、そもそもなくなってしまう時代がこないとも限らない、とは思う。

ミニプニ

昨年の3月に腰痛がでた。いわゆる軽い腰椎間板ヘルニア
コルセットとかで誤魔化し、痛みはおさまったのが、その後も、硬い椅子に座る、革靴を履く、などで具合が悪くなる。

それで靴はスニーカーを多用。革靴でもせいぜいAsics Walkingまで。
高級革靴などは二度と履けないな、と思い知った。
(最近はHOKAで足のクッションに関しては満足している。HOKAバンザイ。)

で、座る時。
オフィスチェアなどは疲れにくいものを選んでいるが、出先では我儘言えない。
特に、ジャズライブ観に行く場合、高級店でなければ、(いいミュージシャンが来る時などで、いつもより観客動員が多い時なんかは、丸椅子を倉庫から引っ張り出して座ってもらう、みたいなことはよくある)硬い椅子を我慢することは多い。
そういう時に、テキメンに腰に来る。

そこでWebで紹介されていたこのミニプニを買ってみた。

いいね。
300gと軽く、そしてかさばらない。
クッションは正直そこまで強くはないがが、硬い椅子に座った瞬間「あ…これは30分もたないかも」
という絶望感はなくなった。
とはいえ、ライブでいえば、1セットはもつけど2セットは無理。そんな感じではある。

あと軟弱腹筋ローラーで膝んとこにかましておくとすごいラク