このまえピケティ本も高橋洋一著であったが、これも高橋洋一氏による統計学の初歩的な入門書。
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これ、普通にわかりやすい。
統計苦手な人にも噛み砕いて理解してもらおうという歩み寄りも見える。
まずまずいい本じゃないかと思った。
(私は統計のエキスパートではないが、まあ論文を書いたり論文を解釈できる程度には理解しているつもり)。
このように高橋洋一氏が統計が苦手な人に対して啓蒙的な態度で解説してくれるのは、氏の問題意識ゆえだとは思う。
実際この方は、専門の政治・経済学では一貫してわかりやすいメッセージは伝わりやすく、主張も明快である。
Web記事なんかをみていると、4000字くらいあれば、高橋氏はきちんとした論旨で正しいことを明確な論旨で書くことができる。異論反論はともかく大多数を納得させられる記事を書くことができる。
みんなが世界を正しく理解すれば、より世界はよい方向に向かう。
そのためには、みんなに正しい知識を持ってもらいたいし、その上で自分で考えてもらったらいいんじゃないかな。
と高橋氏は思っているのかなあ。
知的に誠実な態度だとは思うのだ。
ただ、だからこそというか、今回の「コロナはさざなみ」という失言に足元を掬われたのかなあと思った。
* * *
結局のところ、大衆の「メディア・リテラシー」は高橋氏の想定以下である、ということに尽きる。
4000字程度の記事を読んできちんと読解できる人は、思った以上に少ない。
最近ホリエモンがYoutubeチャンネルで言っていたけれど「本を読まない人間ってこんなにいるんだ」と。ホリエモンのYoutubeでの言動は著書よりも随分内容が薄いけど、本は数万部、Youtubeはそれより二桁多いから。
また、Webで活動しているとクソリプって当然あるものだけど、例えば僕のこの弱小Blogはクソリプはほとんどないけれど、それは多分一トピックの文章量が多すぎるからだと思う。
多分、中学の教科書を読んで理解できるレベルって50%くらい。
新しいことを始めるに際して、きちんと参考書を選定して、スモールステップで独習できる人って、多く見積もっても25%くらいだ。
マスコミ、そしてマスコミの受け取り手である大衆のリテラシーは、残念ながら高橋氏の思惑を超えているんでしょう。
それ以外の人にとっては、世界はツイッターの140文字で記述できる程度の複雑さしか許容できない。
* * *
「話せばわかる」といって撃ち殺されたのはかつての犬養毅。
世の中には話そうとしない、もしくは話すことによって相手の「考え」を一度自分が受け止めることを恐れる人たちが一定数いるということを忘れてはいけない。*1
「話せばわかる」と思っているリテラシーある人たちはわきまえておく必要があると思った。
まあ高橋氏も現代日本でよかったとは思うよね。辞任するだけでいいんだから。
かつてのポルポト派や黎明期のソ連だったら(以下略)
*1:そういう人にとっては小泉さんとか安倍さんの「わかりやすさ」って大事なんじゃないかなあと思った。小泉ジュニアも、そういう点では結構需要があるんじゃないかと思う