オススメ度 60点
古本文化の蓄積あなどりがたし度 100点。
私の住んでいる街の少し近くに倉敷市がある。
昔から商都として栄え、今も古い家並みが美観地区に残る。
大原美術館など文化資本蓄積も多い粋なところだ。
この街で年に一度『倉敷ジャズストリート』というイベントがある。
数年前から参加させていただいていたのだが、今年はコロナで、いつも通りの開催はできなかった。
しかし主催者のアベニュウ店主松本さんの尽力で、今年は無観客動画配信での開催にこぎつけたのである*1。
www.jazz-street.com
私はStay Blueというバンドで出演*2した。
そのために11月1日倉敷美観地区に赴いたのである。
出番は20分だが、無観客動画収録は、普段のライブとも違いかなり疲れた。
終わってやれやれと肩の荷をおろした気分になり、美観地区の名古書店『蟲文庫』に立ち寄った。
mushi-bunko.com
最近の私は、実用性の高い本はKindle一本やりで購入している。
が、雰囲気のある古書店は、やはり人生を豊かにするのだなあと、考え直した。
古式ゆかしい店構え。静謐でほんのり趣味性の高い音楽がかかった、少しだけ埃くさい空間は、古本屋でしか体験できないものだと思う。*3
数冊適当に選んで*4そのうちの一冊がこれだった。
ちくま文庫の、古本とか本に関する漫画のアンソロジー。
冒頭は『コーヒーもう一杯』が印象的な山川直人の『三丁目の夕日』っぽい人情噺。*5
そのほか、つげ義春はつげ義春っぽいし、水木しげるは水木らしく、諸星大二郎は諸星っぽい、本に関する不思議な話が続く。
* * *
アンソロジーなので、全体としての読後感はあまり強い印象を残さない。
が、昭和の古本を取り巻く時代状況がうかがい知れてよかった。
本というのは、こうでなくちゃいけない。
やたら高価な初版本や、レアな全集が高値で取引される現状は、しかし例えばどんどん過去のアーカイブがKindle化されたりすると、後者については価値を大きく減損することになるんだろうな、とは思う。
だが、例えば今やCDよりもレコードの方が売れている時代だったりもするわけで、もう10年20年も我慢していたら、状況はまた変わってくるのかもしれない。
初版本などのプレミア、著者のサイン入り本などのブランディングは案外長続きするのかも。どうなるんだろう。