半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『「畳み人」という選択』

オススメ度 100点
ラベル化されて弱点が可視化できた度 100点

すごく読みやすい本だけど、言わんとしていること、重要性は深い。

ビジネスには風呂敷を「広げる人」と「たたむ人」がいる(能力や才能ではなくて、どちらかというと役割分担)。
広げる人がいないと、イノベーションはそもそも生じないので、「広げ人」にスポットが当たりやすいけれど、実は、広げ人が投げかけたアイデアをしっかりとした形に落とし込み、実務につなげ、問題が生じたときの解決やメンテナンスを行うふろしきを「畳む人」がいないと、ビジネスはうまく回らない。

一言でいうとこれ。
当たり前のことを言っているけど、「畳み人」というラベルを与えることによって、プロジェクトに必須な要素・役割を明示化できたことは大きい。

私も今の職場で色々な取り組みを提案してきたけれど、ここ最近は、コンセプトを投げかけるだけで、そのあと誰も仕事を引き継がないので、言いっ放しになることが多い。これって、誰も「畳み人」がいないからだ。

以前は、プロジェクトを形にするための企画立案書であるとか、役割分担を決めて振り分けを行う部分まで自分で指示していたのだが、いつしか、仕事そのものが多忙になってきたのでそれをしなくなってきていた。

当初は組織のトップとして部下の掌握度が低いと自覚していたため、具体的に手取り足取りしないと動かないだろうなと思って、細かい指示を出していたのだが、数年経つと、これくらいは大丈夫だろうとコンセプトのみ伝えるように「後退」してしまっていた。
その結果、なので、具体的な提案は拾われるけど、実現するまでに数ステップが必要なものなどは、ピックアップされない、という事態が起こっていた。

多分「畳み人」という役割をあまり重要視していなかったこと、それから「畳み人」は広げ人と同じくらいビジネスの能力が要求されるはずなので、そういう人材や役割に対するインセンティブも低いのが原因なんだと思う。

文中にあったドラッカー

戦略はコモディティであり、実行こそがアートである

を肝に命じたいと思う。あと設楽氏の個人史も大変おもしろかった。激動の20世紀末〜21世紀を生き抜いた人の個人史は、同時代であるのも理由かもしれないが、ひどくわくわくする。

以下、備忘録:
インデクスだけみて興味を持った人は、ぜひ読んでみてください。
「畳み人」は「仕事人」でもあるわけで、ビジネスにおけるTipsの洗練度も半端ないと思った。
・「広げ人」はある時は「畳み人」として仕事もしてきている。
・「広げ人」の朝令暮改は仕方がない。(状況に合わない号令を続けるより、変えた方がいいから)
・「Do」が広げ人、「How」が畳み人。
・「畳み人」は広げ人のことを世界で一番理解しておく必要がある(なんでも話せる唯一の味方になる必要がある)
・経験を得るという観点においては「畳み人」はトラブルを好物にすべき
・畳み人は「リスクを察知する力」が求められる。広げ人にすべてのリスクを伝えるとアイデアにブレーキをかける。しかし最大のリスクだけは共有してもらう必要がある。現場判断は畳み人の重要ミッション。
・複数の解決方法を想定する習慣をみにつけよう。
・広げ人がだしたアイデアを実行させながら、実際に畳み人がアイデアをコントロールしてゆくことが畳み人の醍醐味。畳み人からの提案がプロジェクトの根幹になることもよくある
・仲間を集める時は能力よりもやる気=伸び代を優先させよう
・挨拶やお礼ことは働く上で「コスパのいい武器」
・理想100%のチームは実現しない(理想にこだわるとメンバー一人一人のパフォーマンスが気になる)
・チームメンバーのモチベーションに根ざした役割を割り振ろう。自分で仕事をやらない(目がゆきとどかなくなる)
・成功はチームメンバーの手柄、失敗は自分の責任、という態度が大事。
・報告には極力主語をつける
・相手への想像力をもってアクションを起こす。相手とその先にいる他者まで認識する
・畳み人から広げ人に回った時に大事な3つのこと(省略)