半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

[comic]小田原ドラゴン『ロボニートみつお』

あまり賛意が得られないのでありますが、小田原ドラゴンの一連の作品群がとても好きなんです。
どちらかというと下から目線。労働者階層、ですらないニート的な視点からみえる、おかしくも悲しい現代社会。
山野一『四丁目の夕日』に近い毒をもった世界なのに、変にファンシーな絵柄。

そんな小田原ドラゴンの作品を楽しみにヤンマガ、ことヤングマガジンを見ています。

しかし『チェリーナイツ』は大好きで、特に「バンギャ編」に涙した私ですが、世間的な評価はあまり、というか全然高くありません。
チェリーナイツ続編である『ワイルドチェリーナイツ』、これは、江藤が宇宙戦士となり戦ったり作者のマンション購入の経験を踏まえたエピソードが語られたりしつつ本当に正しい餃子のタレを探しに宇宙の果てまで探しに行くという「間違ったセカイ系」の話でありました。しかし 2017年5月現在、Kindle化もされていません。さらにその続編、『チェリーナイツR』「田村ワレ」こと風俗大好きの田村が、金玉を覆う男性用ブラジャー会社「タマブラジャー」の社長になっている話なんですが、Rに至っては単行本化さえされていない始末。
商業的には苦戦を強いられています。
まとめて読むには向いていないんですかね。


こんな感じで身も蓋もないのが持ち味です。


そんな小田原先生の新作「ロボニートみつお」はこの度完結し、めでたくKindleでも出版されました。良かった。

町外れの研究所で博士が作り出したロボが深夜目覚め…
という冒頭で始まるのだが、このロボは働きたくないロボ、ニートロボなのである。
揺籃期、博士との怠惰なニート生活を経て、博士は死んでしまい、みつおは、街を彷徨うことになる。
いろいろな濃い人々と出会う。いってみれば地獄めぐりに近いその道行きは、キャラの濃さと脱力も含めて、現代版『ライ麦畑』のテイストがある。
主人公はホールデン・コーンフィールド同様に、ただただ流される。しかし明るく屈託がない。

ロボニートみつおには、前出の「チェリーナイツ」の江藤と田中もちょっと客演してくれる。
読後感はあくまで虚しく、そしてなんともいえない悲しさが残る。そういうところも少し「ライ麦畑」です。

私はニート的な生活とは無縁で、社会的にはむしろ真逆と言ってもいいのであるが、作中のニートに共感することハンパないのはなぜでしょう。

個人的には

ネットを見ること風のごとく
親の説教を聞き流すこと林の如し
フィギュアを買うこと火の如く
働かざること山の如し

の、ニート風林火山の皆様が好きだったですね。

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

* * *

ちなみに前述した暗黒下町物語『四丁目の夕日』はトラウマ級の後味の悪さです。
疲れたり、死んじゃいたいような気分の時は僕はこれを読みます。まだましだって思うから。

四丁目の夕日 (扶桑社コミックス)

四丁目の夕日 (扶桑社コミックス)

でも山野一は妻ねこぢると共作し、ねこぢる自死のあと再婚、今は双子の娘を描いたほのぼの育児マンガを発表してらっしゃる(絵柄はねこぢる)。人生何があるのかわからないものですよ。