- 作者: 朱川湊人
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2003/11/01
- メディア: 文庫
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で、鉄柱の方が、その「自死という生き方」に例として出ていた。
ある地方都市に左遷されたサラリーマンが、その土地にしかない奇妙な風習と出会い、それで……という。
まあ、楢山節考的な、生命の価値判断が現代と違うというか、そういうの。
島根の、かなり田舎で研修医時代をすごした体験として、あまり表に出てこない田舎の因習というのは確実にあります。(そういえば、「おがみ」の話、書いてなかったかな)
ゆえにこの話にも妙なリアリティを感じました。
「今日は……生きることにするよ」
メメント・モリ という言葉がある。
現代日本は死を考えなさ過ぎるという側面は確かにあるが、死は日常、つまり生にとってスパイスに留めておくぐらいがいい。死という存在があまり傍らにあるのも不健全ではある。
医者という人種が、死という深いものに常時接している割には、深みがなさすぎるように見えるのは、(自分も含め)彼らは死という存在に直面することがいかに危険かを肌で感じており、敢えて省察を避けているからにほかならない。深みをもって死に接することはいかに危険であるかの間接的な証明と思う所以だ。