半熟三昧(Half-boiled doctorのアウトプット Blog)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『壜の中の手記』ジェラルド カーシュ

壜の中の手記 (角川文庫)

壜の中の手記 (角川文庫)

これは、いわゆる奇想譚そのもの。

 SF=Science Fictionを「(S)すこし、(F)ふしぎ」といみじくも言ったのは藤子不二雄Fであるが、SFの大御所ウェルズの作品とかだって、サイエンスフィクションというよりは、「すこし不思議譚」だよね。

 彼らにとって未来である2010年代に生きる僕ら、1950年代や60年代に「ハードSF」(クラークとかだろうか)なるものを通過している僕らの目からは、ウェルズは幻想文学だし、このジェラルド・カーシュも大体同じ時期の、幻想文学と言っていいのだろう。

 恩田陸『いのちのパレード』と比べると、やはり1911年生まれのイギリス人が醸し出す雰囲気というのは、読みにくいものではあるが、やはり本物感に満ちあふれている。本物の法螺。Smoky。
 それに、いろいろ新たな問題はあるものの、今我々が生きている時代というのはぽっかりと晴れた青空のような脳天気さがある。第二次世界大戦や冷戦というのは本当に人の心に重しというか、暗鬱な雰囲気を与えていたのかなあという気がするのです。空気感というか、気圧というか、そういうものは全然違う。