- アーティスト: Cab Calloway
- 出版社/メーカー: Sony
- 発売日: 1989/12/19
- メディア: CD
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Cab Calowayといっても、僕らの世代にとって一番馴染みが深いのは、おそらく"Blues Brothers"ではないかと思う。主人公達の育った孤児院に住み着いているホームレスを演じているのが、キャロウェイだ。
話は飛ぶが、『木更津キャッツアイ』のテレビ版第5話で、宮藤官九郎はこのブルースブラザーズのオマージュをやっている。三題噺ではないが、孤児院。借金を返す。バンド活動というところが共通で、もちろん話の細部は大幅に違う。
しかし、メンバーが現れない気士團のライブ会場でじれた客を前に、はからずも前座を木更津キャッツ達が務める、というシーンがあるが、このシークエンスはブルースブラザーズを意図的になぞっている。本家で、ライブ会場、ブルース・ブラザーズがなかなか出てけえへんという時に、ひょいと前座をつとめるのが、キャブキャロウェイだ。
♪アリアリアリア、イリイリイリイ……という歌、というとわかる人も多いだろう。
本家ブルースブラザーズを観たクドカンも、このハッピーなシークエンスがフックしたであろうことは想像に難くない。木更津も、ブルースブラザーズも、音楽っていいなと思えるいいシーンである。
この時のキャロウェイは前座とはいえ結構ええ感じに盛り上げているわけで、往年のキャロウェイの持っていたポピュラリティに対するリスペクトがこういう形で示されていたが、このアルバムは、キャブ・キャロウェイが自己のバンドを率いてまさに活躍していた頃の1930年代後半の作品。
Chu Berry featuringと書いてあるが、それ以外、多くは知らないミュージシャンだ。Bassは御大Milton Hintonであるが、彼だって、その頃は御大ではなく、現役バリバリであろう。
サウンド自体は、キャブ・キャロウェイのユーモア感覚が垣間見える洒脱な雰囲気です。スウィング時代の幾重にも折り重ねたサックスのシルキーなアンサンブルは今ではない贅沢な感じがある。
だが、残念ながらそれ以上の感想を語る言葉がない。僕もジャズ愛好家ではあるが、スウィング時代(Swing Era)の音楽を弁別する耳はない。一時期そちら方面に行こうかと思った時期もあるのだが、僕らの世代で、この時代の音楽を愛聴するというのは、ディレッタンティズム以外の何物でもない、と思ったのだ。
昔の音楽にダイブするにしても、現代=水面からは、潜水可能深度を大きく越えすぎていると思う。たとえば村上春樹がSP盤時代を愛聴する、というのは彼の属する時代からみて、まだ現実味があるが、1970年代生まれの僕がそういう事をするのは、身の丈にあっていない。
僕がこのアルバムを聴いて思ったのは、つまりはそういうことだ。
光円錐というものを持ち出すまでもなく、時間は距離で、この1930年代というのは、感情移入するには些か遠すぎる。