- 作者: 恩田陸
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2001/01/30
- メディア: 文庫
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恩田陸は『夜のピクニック』、『象と耳鳴り』、『図書室の海』を読んでいますが、図書室の海にはこの六番目の小夜子の後日譚が書かれていました。そういうわけもあって、この本を読むきっかけにした次第。
夜のピクニックでもそうだけど、この人はいわゆる学生生活のみずみずしさを書くのがとてもうまいと思う。平凡な、しかし今となっては取り戻せない幸福な想い出。僕たちはそういった平凡な生活の中にあった青春を、卒業して振り返ることによってしか認識することが出来ないわけですが、そういう過ぎ去った日々のよき記憶というものを、非常に肌触りよく書いて、僕たちに既視感を抱かせてくれるわけです。
きゅんきゅんきてしまいますね。青春に。
いい話なんだけど、結局物語りを牽引する力の正体はよくわからなかったので、なんか隔靴掻痒感といいますか、アンフェアな感じを抱いてしまいました。不思議な話にしたいのか、あくまで青春話なのか、とかそういう方向性がしぼれてないっつーか、その辺が不統一で、ちょっとラフな印象を受けた。このばたばたはその後、『夜のピクニック』に持ち越されて、落とし前がついたということなんだろうなあと勝手に思いました。