半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『光の帝国―遠野物語』恩田陸

光の帝国―常野物語 (集英社文庫)

光の帝国―常野物語 (集英社文庫)

この前再読した『蒲公英草紙』(http://d.hatena.ne.jp/hanjukudoctor/20110723)が存外に面白かったので、同シリーズの光の帝国を買って読んでみた。

なるほど。
 常野一族はサイボーグ009みたいに、いろいろな超常能力を持っているのか。
 それは、小説的には膨らみやすいけれどもなあ。

 非常に小説としてうまいと思いましたし、面白かったんですけれども、この前の作品のテーマであった「死について考える」というのは、少し後景に下がっておりまして、今の僕のニーズにはあっていないように思いました。
 だから、逆にあまり切迫感なく読むことができ、むしろ安心した読書となりました。

 むしろ、この連作短編集の通奏低音としては
周りに理解されない「才能」というものとどう折り合っていくか、表出できない才能と自己の向き合い方、とか、そういうものかもしれない。多くの人に共感できる要素としては。

僕はもう人生の折り返し地点を過ぎ、自分のなかの才能(もちろん長所もあるが、いわゆるGiftというものはない、きわめて普通の秀才なので) は見極めているので、あまりこういうのに心動かされないのです。
 むしろこの小説に動じる程度に、自分の中に隠された才能というものを期待したい、と、思わないでもありませんが。今でも。

 音楽とかもやっているんですけれども、僕が生息しているタコツボはジャズ、ですが、ジャズの尊敬すべきプロの人ってアホほど練習しているんですよ。好きなことに対して集中できる、という才能はあるかもしれませんが、ナチュラルボーンな才能っていうのはあんまり感じたことがないので、こういう「超能力」的なものは、少し違うような。