- 作者: 恩田陸
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2000/09/01
- メディア: 文庫
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なるほど。
常野一族はサイボーグ009みたいに、いろいろな超常能力を持っているのか。
それは、小説的には膨らみやすいけれどもなあ。
非常に小説としてうまいと思いましたし、面白かったんですけれども、この前の作品のテーマであった「死について考える」というのは、少し後景に下がっておりまして、今の僕のニーズにはあっていないように思いました。
だから、逆にあまり切迫感なく読むことができ、むしろ安心した読書となりました。
むしろ、この連作短編集の通奏低音としては
周りに理解されない「才能」というものとどう折り合っていくか、表出できない才能と自己の向き合い方、とか、そういうものかもしれない。多くの人に共感できる要素としては。
僕はもう人生の折り返し地点を過ぎ、自分のなかの才能(もちろん長所もあるが、いわゆるGiftというものはない、きわめて普通の秀才なので) は見極めているので、あまりこういうのに心動かされないのです。
むしろこの小説に動じる程度に、自分の中に隠された才能というものを期待したい、と、思わないでもありませんが。今でも。
音楽とかもやっているんですけれども、僕が生息しているタコツボはジャズ、ですが、ジャズの尊敬すべきプロの人ってアホほど練習しているんですよ。好きなことに対して集中できる、という才能はあるかもしれませんが、ナチュラルボーンな才能っていうのはあんまり感じたことがないので、こういう「超能力」的なものは、少し違うような。