半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

"Hallelujah〜Live2001-2003" Ann Sally

Hallelujah~Live2001-2003

Hallelujah~Live2001-2003

 アン・サリーは、よい歌い手です。
 微笑みながら声を伸ばすと、ちゃんと微笑んでいるかのような声で歌い、悲しい歌詞には悲しさをきちんとのっけることができる。歌詞、というか音に情感を込めることができる。
 これは、ライブテイク集。ひとつところのライブではなく、いろんなところでのライブテイクを集成したらしい。前にVoyageを聴きましたが、曲は半分くらいかぶっている。きよしこの夜が存外に沁みました。
 アレンジは、極力ボーカルを邪魔しない、というかボーカルのアコースティックさがひきたつようなサウンド。料理でいえば、真ん中に炊き立ての超うまいご飯がでーんとおいてあって、あとは、塩昆布とか、梅干とか、焼き魚とか、単品で存在感を主張するおかずじゃなくて、「ごはんをうまく食べる」ためのおかず、みたいな感じ。
 きょうびのジャズボーカルの作品ではバックのサウンドで、創作料理のようなオリジナリティがキモになるわけです。アンサリーは、そういうのとコンセプトがだいぶ違っていて、直球勝負です。いわゆるジャズボーカルだって、みんな歌うまいんだけどね。ジャズの場合、どうしても「ひとひねり」で勝負せざるをえないところがある。
 逆にAnn Sally以降、「いいメロディーを、さっぱりと歌い上げたらそれでええんや」というのが市民権を得た感はあります。そういうやり方がありなんやというコンセンサスは、明らかにアン・サリーの功績でしょう。ただ、それによってボーカリスト市場は、ますます昏迷の度を深めたな。

 どうでもいいけど、ジャケットは、小津安二郎の映画のオープニング柄だと思いました。好きですこの柄。麻袋。顔のうつったジャケもいいんですけどね。