- 作者: 梨木香歩
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2000/12/26
- メディア: 文庫
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昔、英国人一家の別荘だった、今では荒れ放題の洋館。高い塀で囲まれた洋館の庭は、近所の子供たちにとって絶好の遊び場だ。その庭に、苦すぎる想い出があり、塀の穴をくぐらなくなって久しい少女、照美は、ある出来事がきっかけとなって、洋館の秘密の「裏庭」へと入りこみ、声を聞いた―教えよう、君に、と。
少女の孤独な魂は、こうして冒険の旅に出た。少女自身に出会う旅に。
以上棒読み。
英国、植物、戦前。
例えば村上春樹には村上春樹なりの小道具があるわけですが、梨木にも梨木たらしめる雰囲気のこういう小道具があるわけで、そういう意味では梨木らしさ溢れるお話ではある。
ただ、あちらの世界の描写は、他の梨木作品に比べて少しリアリティが欠けるような印象がありました。いや、まあ、リアルじゃないからリアリティがなくてもいいんですけど。なんか、不思議の国のアリス的というかね。
夢の本質って、虫瞰的じゃないですか。
他の梨木作品では、そういった非リアル世界は触感的なんですけれども、この作品のファンタジー世界は鳥瞰的で、どうも視覚的なきらいがある。それで理が勝ちすぎているようにみえてしまうんですよ。確かに物語の構造上、このファンタジー世界は継続的でなおかつ社会的なものである必然性があり、この世界の構築に随分苦労したんだろうなとは思われるわけですが、その整合性ゆえに作者の側から提示される夢解きのヒントがありすぎて、クリアカット過ぎるんです。
うーん、いや、面白いんですけれども。