- 作者: 田口ランディ
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/02/28
- メディア: 文庫
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ああいう形で、Webで配信されていたあまたあるコンテンツの中で、彼女のコラムは完成度が高く、目を惹いた。その後Web出身というのをひっさげて活字の世界へ進出した彼女だが、その後剽窃疑惑などの問題でてきたりバッシングにもあったり、Webで活躍していた時の期待ほどの活躍はいまひとつできていない。ま、ソレンタムが男子プロに挑戦したけれどもまぁそんなに甘くないのをみている一観客といった気持ちである。
この人、「電波」的な文脈でとられることが多い。
確かに、ちょっと非科学的な、これはちょっと思いこみが激しいんじゃないか?と思うところもあるのだが、しかし言っていることは結構いいツボついていると思うのだ。この人は関係性に関する嗅覚がやたらするどい。こういうのはとかくわかりやすい表現を拒むようなもので、そもそもが言葉にしにくいものだから、彼女はその言語能力の中では最善をつくしているんじゃあないかと思う。
それでもやはり表現しづらい余白を言い表そうとするがゆえに、オカルトじみた話になるんじゃないだろうか。しかし、そもそも人間関係の嗅覚が優れた人間の交感能力によってあたかもテレパシーに見紛うような現象を産むこともしばしばあるのだ。たとえば、あれほど偉大な河合隼雄でも、対談などで時々ぎょっとするようなことを言っている。けれど、その言葉にはいろんなものが凝集されていて、必ずしも文字通りではないのだ。
この本は、彼女のルーツである家族関係に焦点を当てたエッセイが多かった。
ここまで深く潜るのは、結構タフな自己分析が必要だと思う。
そして、それを公言することだって、タフなことだ。たとえば村上春樹は、あれだけ同じモチーフの「救済」を繰り返し書いていますが、それは、書かねばならない余程のトラウマを抱えているのではないかと思うのです。しかし、彼自身の実話として自己を語ることはない。これは、そういった自分の体験を踏まえた上で、作品に昇華させているということで、作品を生み出すという意味ではその方がより生産的なのだろうが、彼女の方がフェアなような気がする。