- 作者: 藤堂志津子
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1992/10
- メディア: 単行本
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いかにも女流作家らしいきめ細やかな心理描写の、だが通俗的な恋愛小説、といってしまえばそれまでだが、陳腐さをなくすためにか、ストーリーの中心に主人公の独身女性が一戸建てを購入したというエピソードを持ってきている。よくある錬金術で、平凡なOLの平凡な生活という坩堝に「家」という異物を投げ入れ、予想つかない化学反応を楽しむ、ということだろうか。ま、「ドラえもん」でいうと猫型ロボットの役をここでは家が果たしているわけですな。
初出が1992だから、独身女が一軒家を購入するという話に、虚構性が成立しえたのだと思う。今なら、独身女性が家を購入するという話は珍しくもなんともないから、小説にならないのではないか。逆にいうと時代を先取りしている、といえなくもない。
そういえばこのころ、星里もちるとか『スピリッツ』で住宅難の漫画とか書いていたなぁとか思い出した。住むところの話だけでプロットが成立していたのだ。
おすすめかって言われると、それはなんとも答えようがない。僕が普段読むタイプの小説ではないから。でも、普通に楽しめました。