半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『以下、無用のことながら』司馬遼太郎

以下、無用のことながら (文春文庫)
 司馬遼太郎氏の死後、遺されたエッセイからピックアップされた71編の随想録。

 まぁ、あれだな。レコード業界の話でいうと、未発表テイク集が死後発売されるようなものである。ああいうものを買うのは、ファンに決まっている訳ですが、これもそういったものだ。
 こうしたエッセイ集のエッセイの取捨選択には作者の意向が反映されているということがよくわかった。この本は残念ながら、司馬氏が生きている時に作った本にみられるような一貫性には欠けている。雑多な文の寄せ集めで、逆に生前の司馬氏は本を作るに当たって、相当「潔癖」であったことが窺える。

 軽度の司馬中毒にはよいと思われる。しかし重度の司馬中毒者にとってはこうしたエッセイの断片はどこかで読んだ覚えがあるだろうから、不要であるのではないか。そうはいっても重度な人間は『コンプリート』のために、ぶつぶついいながら買い揃えるのだろうと思うが。しかし、そういった人間は単行本を買っているだろうし、買わないか。それともマニアは単行本、文庫両方買い揃えるものなの?