半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

宮沢章夫『よくわからないねじ』

 カバーしりあがり寿のイラストに惹かれて買ってみた。しりあがりさん、売り上げに貢献してます。
 いつもの宮沢節ではあって、正直この形態は僕の中で飽和しつつあるのだが(いつもここからの「悲しいとき〜」というのと同様に、同じ形式というのはどうしても限界がある)、今回は一つ一つのエッセイがやや長目なので、『青空の方法』より気に入りました。個人的には「音楽の話はもういいじゃないか」がおもしろかったです。

そこで彼女がしたのは、よくある話だが、音楽雑誌のメンバー募集のコーナーにハガキを出すことだ。
「18歳の女。ヴォーカルをやります。一緒にバンドをやってくれる人を求めています」(中略)
 それから一週間ほどして、雑誌をみたという男から手紙が届いた。電話番号が書いてあり、連絡すると、やけに話が合った。不思議なほど音楽の趣味が似ている。幸先がいいと思った。やっぱり東京に出てきてよかった。それで会おうということになって待ち合わせしたのは新宿の喫茶店だ。(中略)
挨拶をすませると、男は音楽の話をしようとした彼女にいきなり言ったのだった。
「彼氏いるの?」

 個人的な話をしますが、私は大学の軽音に所属しておりました。うちのクラブは結構まじめで、女の子もまじめに音楽をやりたい人間が大多数でありました。僕はこうした「音楽の話はもういいじゃないか」的な人間ではなかったし、むしろそういう雰囲気を排除しようとしていたけれど、今思えば余計なお世話だったのかなぁとしみじみしました。
 むしろ今となっては「音楽の話はもういいじゃないか」的な人間になっていい思いをしておくべきではなかったのだろうかと、人生の中でモテたことのない私は思うのであります。(例外的に、小学校低学年の時はもてたらしい。あのころもてなくてもいいから、他の時期ととりかえて欲しい神様。)
 世の中に「音楽の話はもういいじゃないか」的な話はごろごろしている。