もともとは"Cal Tjader plays Harold Arlen" と"West Side Story"二つのLPのニコイチCD。レーベルはFantasy。
サウンドの方向性は二枚ともほとんど一緒で、一枚はHarold Arlenの曲集で、もう一枚はWest Side Story、つまりLeonard Bernsteinの曲集というわけである。
厳密に言うとこのCDはジャズとは呼べない。これらの曲はよくジャズでも演奏される機会が多いが、ここではMusicalで流れていた原曲のイメージを極力尊重した演奏であると思う。
Harold Arlenの前半部分はトリオ(ds/pf/vib)での演奏だが、ほとんどフェイクがなく、テーマをPf/Vibでユニゾン。ぶっちゃけて言えばジョージ・シアリング サウンド、である。スッカスカの音空間を、敢えて埋めない姿勢はことさらクールに映る。
後半部は、この閑散としたサウンドにストリングスが入り、ちょっと脂っぽくなる。スッカスカのサウンドを埋めるこうしたやり方も、ジャズ的な手法ではない。
West Side Storyではブラスも入った濃厚なオーケストレーション。やはり、いわゆるジャズアレンジではないのだが、Bernsteinの編曲とやや趣向が異なるのが新鮮ではある。二枚とも、アレンジはClare Fischerだ。サウンドの方向付けは彼がしており、彼のアルバムといえなくもない。Cal Tjaderはボーカリストのような立場に乗っかってメロディを叩いているだけ、のようにみえる。だからリラックスしているのかもしれない。
一言で言うと、「ミュージックフェア、今週のゲストはCal Tjaderさんです」という趣きだ。彼がどう思ってこの演奏をしていたのか、知りたい。だけど、こういうサウンドって、アメリカ音楽のメインストリームだからなぁ。結構やって悪い気はしなかったんじゃないだろうか。
そうそう、肝心なCal Tjaderの演奏であるが、テーマをフェイク少なく演奏しても、ノリというか、一瞬のバネが利いた瞬発力のある出音は、ジャズVibesの片鱗を覗かせるので、あまり退屈はしない。