ジャズ、(もっと具体的に言うとジャズ業界のこと)を題材にしたオムニバス小説。多面体というか、統一感がない。逆に読み手によって感銘を受ける話がばらばらである。読み手の読む時期によっても全然異なるのではないか。
「ああ。ああ。あんな人がこの世の中にいたなんて」
おれは不安になった。「いったいお前がイカれたのは、彼なのか、彼の演奏か」
「分析しないでっ」
しかし、一遍一遍が短いので、何度も読むと飽きがくる。ジャズのスタンダード・チューンを題名にした『男たちのかいた絵』のほうが統一感があってよい。