Web記事で興味を持って読んだらこれが予想以上に面白かった。
「図鑑御三家」の一角をなす有名昆虫図鑑の監修を任され、著者は理想に燃えた。「子供たちのために死んだ虫(標本)ではなく生きたままの虫を撮って載せたい!」そんな学習図鑑は前代未聞だ。目標2千種、期限は1年、撮影はプロではなく全国の昆虫愛好家―最高難度のプロジェクトが始まった。相次ぐ問題、積み重なる疲労、ピリつく人間関係…、だがついに日本全国7千種の生体を撮影、学習図鑑史上最多となる2800種掲載の奇跡の図鑑ができてしまった。これは無謀な挑戦に命を燃やした虫好きたちの、全記録だ。
著者の丸山さんは、昆虫学者の人。多分偉い人なんだけど1974年生まれ、同い年かい…。そういう年なんだよなあ。
図鑑のオファーを受けて「すべて生きている昆虫の写真。しかもすべて白バックで」
というとてつもない(とてつもないことらしい)目標を立てた。
そして、全国各地の昆虫学者、写真家、さまざまな人たちを巻き込んでプロジェクトが転がる。
「解体全書」に対する「蘭学事始」のような感じの物語だけど、これが、やたらめったら面白い。
昆虫への、昆虫学に大しての愛を感じる、一大冒険記になってるのだ。
私は昆虫にはそんなに興味がない。
けど、めちゃくちゃ引き込まれた。
全然知らないジャンルなんだけど、熱っぽく語り、苦労談を披露している様が、きちんと読ませる物語になっているのだ。
全然しらないジャンルだからこそ、対象物への愛を強烈に感じられた。
何かに狂おしいほどハマったことがある人は、みんな読んでみて欲しい。
絶対感動する。
それにしても、人の長所を言語化するのもうまくて、人材の抜擢も大胆。各人の能力に対するリスペクトもあって、一大プロジェクトのためには人間関係の全てを動員しなければいけなかった事情もあるのだろうが、人の巻き込み方が上手いなあと思った。