半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『よいこの君主論』

オススメ度 100点
裏『もしドラ』度 100点

よいこの君主論 (ちくま文庫)

よいこの君主論 (ちくま文庫)

たろうくん「わかったよ、ふくろう先生。僕もこれから配下の友達の心は恩情ではなく恐怖で縛り付けるようにするよ」
はなこちゃん「私もこれまで通り、愚民どもには恐怖をもって当たることにします」
ふくろう先生「その意気でがんばろうね、二人とも!」

ははは!笑った笑った!
中世イタリアの『マキャベリ』が著した『君主論』。
後世にむけての教訓本として、ビター度が最右翼であるのは、これと『韓非子』ではないかと僕は思っているが、とにかく、人間性悪説による辛辣な人間洞察がウリのこの本。
ただ、冒頭から政体の違いによる統治のコツ、みたいなやつが、とっつきが悪いのだよね。

この本は、以前に『バカダークファンタジーとしての聖書入門』で笑わせてもらった方の本。
halfboileddoc.hatenablog.com

小学校5年生のある教室の中の「覇権」をめぐるという形で、マキャベリ君主論のエッセンスを要所要所に挿入するという、実践的な形式をとっている。
世襲の君主政体』の章の紹介には、ひとし君と同じグループだったけど、クラス替えの時にひとし君だけが別のクラスになってしまったというたかし君を例にあげ、こういう場合、統治形態をむやみに変えようとする事に対する反発が大きい(愚鈍な大衆は変化を嫌う)。

新しく統治した領地の統治法、という例では、男の子グループだったのに、女の子三人のグループを吸収合併したケースを例にあげたり。

  • 反対は厳しく、賛同は弱い
  • 叩くべき相手は少なく、そして叩くときは完膚なきまでに打ちのめす
  • 運命によって君主になったということは、他者に左右されてしまうことでもある
  • 幸運だけで君主になった人には自分の忠実な部下がいない
  • 極悪非道には「良い極悪非道」と「悪い極悪非道」がある
  • 有力者と平民どもは必ず対立関係になる
  • 籠城中は城壁の外にある平民どもの財産、家は田畑などはすべて見捨てるべき
  • 嫌な戦闘を人任せにしていては、統治はできない
  • 悪評について
  • 『政体を守るためにはどうすればよいか』という逆算から行動すべき
  • ケチは多くの人から無用な搾取をしないことで、結果的に『全ての人に恩恵を施している』と言える。
  • 慕われているよりも恐れられていた方が遥かに安全
  • 怖れられることと慕われることは両立し難いけれど、怖れられることと恨みを買わないことなら十分両立できる
  • 自分の立場を守るために必ず味方につけておかなければならない大切な勢力、それが腐敗していたときは、その腐敗を正そうとするのではなく、むしろ自分からその腐敗に染らなければいけないことだってあるんだ
  • 自分より強いものと組んで他者を攻めることは止した方がいい

マキャベリの謂いは、モラルもなく信頼もない中世イタリア諸国家の時代には有効に働いていたと思う。
しかしこれだけSNSやインターネットなどが発達し個人の心情などが昔よりも遥かに広範囲に拡散する現代では、マキャベリの教訓をあまり考えもなしに敷衍すると、時として痛い目にあう可能性もあるだろう。時代にあわせて教訓の本質的な内容をアップデートしないといけないよね。