- 作者: 内田樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/06/10
- メディア: 文庫
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最終講義 生き延びるための七講 (文春文庫)
この方の話すことには、禅問答のようなパラドキシカルな含蓄があり、そこがいわゆる理系の研究家とは違ったテイストがあります。
話題によってはちょっとどうかなというような発言もありますけれども、この『最終講義』は、自分のメインフィールドである教育分野に関するお話だけあって、よく公案が練られていて、興味深いです。さすが。
内田樹入門編として、とても良さそうです。
文学研究者は 「存在しないもの 」を専一的に 「存在しないもの 」として扱っている 。その点では他の人文科学や社会科学よりはだいぶ 「正気 」の程度が高い 。
高度な内容をわかりやすく伝えることことは、そのための才能も要するし決して簡単ではないのに、知的生産の観点ではゼロ査定に甘んじる必要があるである。
上機嫌でいることが、もっともパフォーマンスをあげる
僕は学問をするのは自己利益のためじゃなくて 、 「世のため 、人のため 」ではないかと考えているわけですが 、そういう僕の考え方そのものが実はかなり日本ロ ーカルな 、民族誌的偏見ではないのかと思った。
そういえば 、自分の知能がいかに上等であるかを恥ずかしげもなく披瀝するという傾向はとりわけ欧米で高等教育を受けてきた諸君に強いように思われる 。もしかすると 、彼らの方がグロ ーバル ・スタンダ ード的には 「正常 」で 、僕の考えるような 、自分の才能を自分のために使うのはよろしくないという発想の方がむしろ 「病的 」なのかも知れない。
ねー、面白そうでしょ?
この本はウチダ度が、他の本より高めな気がしました。
このかたのスタイルは、無造作にすたすたと歩くかのように考察を進めちゃうようなところがあって、その分痛快なんですけれども、しかし逆に学問的な堅牢さはない。そういうスタイルって誰かに似てると思ったけれども、多分あれだ。岸田秀。
「ものぐさ」の岸田に対して「街場」の内田。昭和と平成の好対照である。