半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『牛乳の作法』 宮沢章夫

牛乳の作法 (ちくま文庫)

牛乳の作法 (ちくま文庫)

(asin:4480814477:単行本)
 この人のエッセイというか、軽短文とでもいいましょうか、そういうものは、音読するとさらに面白い感じがします。
 まるで、振れば振るほどおいしくなる牛乳、のようにね。

 表題エッセイである『牛乳の作法』は、深いなあと思いました。
 ワークショップをやっていた時の話で、一日街を探して、なんか面白そうなものを発表するというテーマに対して、あるグループは、まず事前に打ち合わせをして、探す順路を決めて効率よく街を探したのに対し、もう一つのグループは、全くテンション低目で、出たとこ勝負で、適当に街に出て行ったが、結果として、後者のグループのプレゼンの方が圧倒的に面白かったという話。
 昔、『牛への道』を読んだ時、この人は真面目な口調で面白いことをいう、という、面白いことをいう人の類型の口調だなあと思っていたんですが、この本に関しては、そういう「おもしろさのあざとさ」のようなものが希薄なように思いました。むしろ真面目な本です。
 でも、どことなく、内田百間(漢字が出ないなあ)的な臭いもします。