- 作者: 新井素子
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1985/01/01
- メディア: 文庫
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それ以降大反省しまして、古本屋で新井素子があれば買う状態になりました。しかしいくつかのエッセイ集を読んで、口調がやはり気に入らず(鳩を「はとさん」と言う文体は僕にとってはやはりちょっと引っかかる)中学時代にしていた評価の方に傾きかけていたのです。
というのが、今回の前ふりで、105円の古本コーナーで投げ売りされているので、買った。
……ほーう。いい。
ちょっと筋立てには無理があるなと思うところもありますが(話のつなぎ方を偶然に頼りすぎている感があるし、主人公は狂言回しなのか、主題なのか、途中からはっきりしなくなってくるから)いい話ですね。読後感がいいんだなぁ。
人の『想いの強さ』という個人的なものが、ある種宗教的な崇高さを以て語られる。文体こそ幼稚であるが、その訥とした口調がリアルさにつながっているのかもしれない。好きではないが、僕も80年代に青春時代を過ごした人間なので、この口調自体は慣れたものではあるから。この主題がその後『チグリスとユーフラテス』に発展したのではないかと思うわけです。
しかし、グロい描写と評判のチャイニーズスープのくだりなどは、所詮ままごと感があった。だってこの前僕が読んでいたの 吉村萬壱の『ハリガネムシ』とかだもの。それに比べればね。