旅のお供に、小樽の書店で購入。酒飲みが酒を欲するように、寝る前に僕は本がないと落ち着かないもので。
甲野氏は合気道から古武術の実践的研究を行っている人で、西洋文化が浸透する前の日本人の身体感は現代のそれとは全く異なっていたのではないかということを提唱しておられる。面白かった。
とはいえ、この本は甲野氏との対談形式、つまりタレント本によくある口述筆記に近い形式で、そこんところがちょっとひっかかるのである。口語というのは文語とはだいぶん違うし、実際に話している言葉をそのまま文章にしても、そのニュアンスは正確に伝わらないような気がするのだ。この対談本を読んだ限りでは、甲野氏そうとう飄々とした誠実な語り手にもみえるし、同時に自負を出して恥ずることのない、ちょっとイヤな人にもみえてしまう。本当のところはどうなんだろうか。
あと、分野がこと武術に限定されていれば、比較的抵抗なく読めるのだが、ともすれば宇宙的なテーマ、哲学的な、社会的なテーマに広がりがちで、そうした部分は全肯定で読むことはできない。どうも、今まで自分が培ってきたいろいろなものが、邪魔をする。
ただ、この人の言う、
「人の運命というものは、あらかじめ100%決まっていて、なおかつ100%自由なものである」
という命題は気に入った。
これは、確かにそうかもしれない。だからもうちょっとこの人の書くものを読んでみようと思う。