半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

Mark Nightingale "What I wanted to say"

WHAT I WANTED TO SAY

WHAT I WANTED TO SAY

これは、私がよく閲覧している Jazz Trombonistの方がとりあげているのをみて、Amazonで購入しました。
(参考リンク:http://sunsonsoo.exblog.jp/16737332/)

ジャケットはなんか、ダメな水彩画風で、かなりがっかり感が漂うのですが…
内容はGood!の一言。
ワンホーン編成で、しごくあっさりした味付けで、正面から勝負していて、これが非常にいい。
 イギリスの人らしいんですけれども、ノリは確かに過剰な黒さはないように思います。

 飛び道具的なハイノートとかだしたり、前後をわきまえない速弾きフレーズとかを全然吹かずに、まるで うさぎと亀といえば亀のように、黙々とフレーズを練りあげて、ちょっとずつ盛り上げていくソロイングなんですね。音も低音がしっかりした、いわゆるトロンボーンらしい音。
 非常にまっとうな、誠実なトロンボーンソロなんです。

 今私が追求しているスタイル的にも、かなり参考になることしきりです。

 一曲目は 岡山Birdのなくなったマスター岡崎さんの好きだった曲、I Remember Youです。わたしもあやかって 素敵な I Remember Youを吹けるようになりたい。岡崎さんにも、Mark Nightingaleにも。

 この I remember youって、テーマの頭ブレイクなんですけど、セッションでは頭ブレイクそんなにやらないですよね。

Triosence "When you come home"

ホェン・ユー・カム・ホーム

ホェン・ユー・カム・ホーム

この前のCalling for rain(http://d.hatena.ne.jp/hanjukudoctor/20120105)と同じくドトールの店内暇つぶし用パンフに取り上げられていたやつです。

 ひとことで言うと、ものすごく白人くさい。
 ジャズ、というよりは白人。
(そんなくくり方も、どうかと思うけれど)

 北欧ジャズということですが、ジャズのもつ、北アメリカ南部感や、黒人感はかなり希薄です。
 どちらかというと、アメリカのクラシック寄りのイージーリスニング(たとえば、ウィンダム・ヒルとか)のような匂いがします。音の重ね方とかそういう語法が。キース・ジャレットの美しさ狙いのフレージング(ケルン・コンサートとか)の時のような匂いも。

 北欧っていわれたらそうなんですけれども、北アメリカ北部のカントリーサイドみたいです。
 ジャケットも水彩画タッチのアメリカの田舎っぽい感じ。

 ジャズでのややどろどろ感、音のダーティーな重ね方が苦手な人には非常にいいのではないかと思います。
 逆にその臭みがすきな人には物足りないかも。
 例えば、ジャムセッション感は全然ないわけですよ。ジャムセッション=予想外の加算を許容しうる猥雑さがなくて、閉じた感じがある。そういう音の作りこみ形が、我々がライブハウスで味わうジャズっぽさじゃないと感じた理由かもしれません。

 今の僕は結構好きかな。これ。

 最後にSometime Agoというスタンダードが取り上げられていますが、これは僕はTromboneなので、Bob Brookmeyerのアルバムにあったのを思い出します。そういやBrookmeyerもこの前死んでしまった…

Bob Brookmeyer & Friends

Bob Brookmeyer & Friends

このアルバムは、後年のBrookmeyerのもつ「クセ」が少なくて、割と聴きやすい。「聴きやすい」とかって例えば赤ワインとかを「飲みやすい」「飲みにくい」とかで判定しているのに近いな。

Jazz For Tohoku

JAZZ FOR TOHOKU

JAZZ FOR TOHOKU

私のよく行くジャズライブスポットDuoは、在京ジャズマンが西日本に遠征する際にハブ的存在になっている御仁がいるおかげで、パリッパリの現役の人達が遊びに来るんです。

 このCDの中心的メンバーである、高瀬さん広瀬さん、浜崎さん、布川さんはその御仁宅へ投宿する常連さんであったりするのですが、その人達から聞いておりましたこの企画。

くわしくはこのページをみてください。
 http://www.jazzfortohoku.com/
何度かのライブを経て、CDを出さはって、チャリティーにするという企画です。
これがいくら売れても、全部寄付するので、Musicianの手元には一円も入らないそうです。

 そのチャリティーCDとして、発売されたこれ。

 どスタンダードで、非常に聴きやすいです。
 内実をいうと、これはコストをかけないために、著作権の切れた古い楽曲を使っているということで。
 
 もちろん、善意で買うのも大事なことですが、これ、上手い人の見本的な演奏なわけで、ジャズ研の学生諸君は是非買って採譜とかしたらいいと思う。そういう不純な動機がもあり集まったお金が結果として崇高な目的に使われるというというのが世の中のおもしろいところですよ。

 あと、直接お会いしたことはないのですが、岡淳さんの実にいい風合いの音色と演奏に個人的にはノックアウトされました。私の師匠は浜崎航さんで、もちろん素晴らしい演奏なんですけれども、浜崎さんの演奏は「つよさ」というものを感じますが、岡さんの演奏は、ちょっとふわりと力が抜けている感じがするんです。

"Calling for Rain" Lori Cullen

Calling for Rain

Calling for Rain

 僕の家の近くの駅ビルにはドトールがあります。朝、散歩がてらドトールで朝飯を食べることが、例えば休日の朝などにはままあるわけですが、ドトールがだしているPR Paperのようなものに、Lori Cullenの新譜が取り上げられていました。それを縁に、アマゾンを探していて、名作という噂のこれを買いました。

 わりと微妙な名曲のカバー
 いいですね。
 Stacey Kentを初めて聴いたときのような感じでした。

 歌い方はどちらかというと、黒人ジャズシンガーのようなGroovyなものではなく、息継ぎと息継ぎの間でポトリポトリとフレーズがドライブせずに落ちてしまうようなタイプなのですが、それはそれとして、控えめなピアノとあわせて、非常に雰囲気のいいサウンドです。

 ドライブには全然合わなくて(僕の車が高級車じゃないからかもしれない。セルシオならロードノイズも聞こえないだろう) 家で 北欧高級オーディオで聴くような感じじゃなあと思います。

 ギルバート・オサリバンの Alone Againとか、いいですよね。少しだけからんでいるSmokyなミュートトランペットのオブリガードとか見習いたいところです。

木住野佳子『ユー・アー・ソー・ビューティフル』

ユー・アー・ソー・ビューティフル

ユー・アー・ソー・ビューティフル

 特に理由はないのですけれども、最近日本の女性ジャズピアノの人のCDをちょくちょくAmazonで購入しているのです。
 これは、アマゾンのリストで「邦人女流ピアニスト」というのがありまして、そういう中で上の方にあったのでクリック購入。

 12年前に発売された木住野佳子さんの4枚目のアルバム。
 スタンダード集であり、非常に聴きやすいです。
 聴きやすい、というのは褒め言葉かどうかというのを昔考えたことはあります(例えば、上原ひろみ、は聴きやすい、とは言えない)。しかし、聴きやすい⇔聴きにくい、いい⇔わるい、という二項対立があるとして、

聴きにくいけどいい、というのはあるけど、聴きにくくて悪い音楽の方が多く、
そして聴きやすくてわるい音楽というもあるけど、それよりは聴きやすいいい音楽の方が多いような気がするのですよ。

いい音楽の中では、聴きにくいけどいい音楽が聴きやすいけどいい音楽よりも稀少性があるのでしょう。
だけど、聴きやすくて、いい音楽は、やっぱりいいですよ。

 昔は、こういうのを「さらっと聴ける〜」とかいって、さらっと聞き流していたけど、じゃあこういう演奏をしろといわれると、なかなかできない。アマチュアは、まず、技術的な到達点が低いことで生じる夾雑物がよい音楽のじゃまをする。

 自分おそれなりに演奏をする昨今、ジャズの批評って、全然できないっす。
 皆自分のクソ演奏から比べたら遙かにうまいんだもん。
 Anonymousな立場で、好き勝手言いたいなー、たまには、とか思っちゃいます。

 選曲に大きな冒険はないが、Here, there and Everywhereくらいが、ポップスのカバー
 このへんは前世紀末な感じではある。いまこういうアルバムを出すんだったら、もうすこしNew Standardsみたいな曲を増やすでしょう。

 ちなみにこの頃の木住野佳子さんは、ジャケ写を見る限り、ものすごく体脂肪が少ないように思います。瞼に死亡がほとんどついていなくて、眼窩が顔の皮膚から見て取れるわけです。最近の近影を拝見しても、全然太ったりしてないのですね。

"Papa Lips"Bob Mintzer Big band

Papa Lips

Papa Lips

Bob Mintzerのビッグバンドのアルバム。
定番の曲と、コンテンポラリーのすごい人達によるバンド。

 だけど、同じクオリティでも、例えばカウント・ベイシーの50年代のアルバムと60年代のアルバムでは、なんだか60年代のアルバムにありがたみが薄いように、このアルバムは、クオリティこそいいものの「歴史的瞬間」に立ち会ってない感じがするんです。

 なんでこのアルバム買ったんやろ、僕。
 Amazonで、適当に買ったんですけれどもね。

 でも、内容は悪くない。全然悪くない。
 ちょっと落ち着き払い過ぎかなあと思うところはありますが。
 冒頭曲Papa LipsでトロンボーンのDave Bergeronがソロを吹いています。

Encounter "Traveler"

Traveler

Traveler

発売日前に、ジャズバーに、ほどよく酔っ払った堀さんから手売りで購入させていただいたという経緯のこのCD。
 メンバーの四人は、師匠でもあり、友人でもあるような関係なのです。

 簡単に言ってしまうと、若手、新世代ジャズということになるのですが、現在ジャズファンじゃない層にも届くよう、現代のジャズというものを考えてサウンド作りをしているそうでして、たしかに、今時っぽいわかりやすさと、ジャズらしさが共存しているように思います。聴きやすいし、ちゃんと聴くと、ちゃんと高度なことをしているのが透けて見える。

 もちろん、現在のオーディエンスにとどく、ジャズ発の音楽、ということでは、菊地成孔のメタ・ジャズのようなアプローチの方が、マーケティングとしては老獪であるように思いはしますがね。
 やはりサブカルチャー層、非ジャズファンに届きやすさがある(観念的なレベルで)。
 Encounterはその意味ではメタ・ジャズではなく、あくまでジャズのフィールドの中で進化の方向を探っている、というわけで、思想的革新性は薄いという側面はぬぐえませんが、ジャズファンからすると、むしろ誠実なサウンディングだと私は思います。

 んで、ライブでみたら、すんごいの。
 このCDの雰囲気から、さらに上乗せで、がっと盛り上がりますから。いやはや、本当にすごい。


 しかしみなさん、ちょっと海にちなんだ曲名が多くなりすぎてやしませんか?