半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『詐欺の帝王』溝口敦

オススメ度 60点
ナンバーワンキャバクラ嬢とつきあうのはどんな気持ちだろう度 80点

詐欺の帝王 (文春新書)

詐欺の帝王 (文春新書)

簡単にいえば、闇金ウシジマくんを青島刑事(織田裕二)だとすると、室井慎次柳葉敏郎)にあたる人。
表にでないオレオレ詐欺・システム詐欺の創始者というか、黒幕のお話。

オレオレ詐欺の帝王」本藤彰に綿密な取材を行い、特殊詐欺の歴史と背景をひも解いた本。
もともとは学生のときから「イベントサークル」のめちゃめちゃ出来る人、だったらしい。
そういう立ち位置からキャリアを開始。
学生であるので、完全にアウトローやストリートの存在でもなく、しかしその中ではアウトロー的な手法でのしてきた。
頭もいいし、荒事にもつよいとなると、確かに人生最強だろうなと思う。

私は地方都市でのほほんと暮らしていたので、この話にでてくるような大学同士のネットワーク化された裏事情について、ぜんっぜんしらないのだが。
そういう都市のダークサイドに染まってしまい、うまく適応したら、なかなか抜け出せないだろうなあと思う。

個人詐欺にはストーリー性があるが、特殊詐欺(システム詐欺)は名人芸を必要としない集団参加の散文的な詐欺である。

という言及があった。特殊詐欺の要諦は、同じ人間を二度三度引っ掛けて、完全にむしり取れるとこまでむしりとる部分までシステム化できていることだそうだ。
本藤が注意を払っている、警察にアシがつかない、2重3重のセキュリティ策にはおそれいるしかない、と思った。

最後に語られていたのは、オレオレ詐欺がはびこったのは、そもそも日本人のマネーリテラシーが低すぎるからであるということ。
何百万、何千万という話は対面でするものであって、そもそも電話ですませる話ではない。電話勧誘で1000万、2000万の金を出すのは、出す人の神経がおかしい、という指摘は、なるほど納得ではあった。

ただ、あんまりにも不法に儲けすぎてしまうと、なかなか資産を動かせないらしく、現金で凍結しておくしかない、という部分もあるのだとか。
(確かに金・株・不動産、なんにしろお金が動くと、税務署に目をつけられる。海外への資金逃避も今はなかなか難しいらしい。
 最近はIT化でマネーロンダリングが難しくなっっているらしく、それは一つの光明なのかもしれない、と思った。