- 作者: 梅原猛
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/05/01
- メディア: 文庫
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その後、梅原猛の本に何度かぶつかり、論評として、なんとなく息せき切った感じの人だなあと思うことがあったのですが、その汗ばんだ論考(という言い方にはなんとなくネガティブな印象もあるね。ロマンチックな、とか、やや酒精度の高いといってもいいかもしれない)が嫌いではなく、買っております。僕の本棚を見る限り梅原信者だと思われても仕方がない感じです。
で、この本は梅原の極初期の作品で、このあと、『隠された十字架〜法隆寺』でブレイクする直前、梅原が西洋哲学から日本の宗教的なものに関心をシフトチェンジした頃の作品です。文のロマンチック度は『哲学する心』に次ぐと思います。
地獄・極楽というのは、西洋的な観念からいうと、対立する二項であるかのように思われるが、伝統的な日本宗教においては 極楽はむしろ非常にまれなもので、地獄は現世を含む六道の一つ、というニュアンスである。まあ、これは日本の伝統的な宗教観を再確認しているだけで、それそのものには大きな目新しさはない。
地獄、は、現世と陸続きなのである。
ただ、昭和の半ばに、こういうことを『再発見』したことには、おそらく一定の意義があったんだと思う。
わたしも、はっとなりましたもの。
まだ、この頃の梅原は具体的に日本の史実に斬り込む前の段階で、つらーっと日本の精神史の総括をしている。ゆえにちょっと勇み足なところもあるが、この頃の思索が数年後、一連の梅原史観と言われる歴史論考の元になったことは間違いがない(考証史学の専門家にいわせると、まさにこの頃の梅原が『諸悪の根源』だと考えるかもしれないけれども)。
今回、この本に再会して、高校生以来読みなおしたことになります。
今ではまあ、非常に慣れ親しんだ文体ですが、若い時の梅原の方がやっぱり体臭がきついわね。
毀誉褒貶が激しかったが、梅原を一気に有名にした問題作。
ものしずかな表紙とはうらはらに、中身は厨二か!っていうくらいアツい。
ついでにもう一冊