半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

梨木香歩 『りかさん』

りかさん (新潮文庫)

りかさん (新潮文庫)

(単行本は:isbn:4037444208)
去年はともかくも梨木香歩を沢山読みました。
裏庭、エンジェルエンジェルエンジェル、からくりからくさ、西の魔女が死んだ、村田エフェンディ滞土録、家守奇譚。あと、春になったら苺を摘みに。
『家守奇譚』(http://d.hatena.ne.jp/hanjukudoctor/20060714)と『からくりからくさ』(http://d.hatena.ne.jp/hanjukudoctor/20061102)が自分としては一番よかったですが、この『りかさん』は、からくりからくさの前日譚と後日譚。りかさんが家にやってきた当時、主人公が小学生の頃の話と、からくりからくさの話の後、数年後の話。
 共に『からくりからくさ』の外伝であり、またからくりからくさの世界のよい補完になっていて感心しました。後日譚の方では、(ネタバレになるのであまり触れませんが)、いわゆる医学的な「急変」が起こります。この時の絶望的な気持ちはとても臨場感があって、はらはらしました。家族の気持ちってこうだよね。こういう場面、自分は慣れているはずなんだけどなあ、つられて自分もはらはらしました。

 ところで梨木香歩の文庫本は同じ人がイラストを描いていて、それが非常に文章のテイストと合っていて非常にいいんです。この『りかさん』は他のイラストに比べると一番具象的ではありますが、りかさんがひな壇に腰掛けてあしぶらぶらしている様子なんですが、あえて顔の正面を避けているのがうまいなと思いました(百人一首小野小町と同じで、各人の想像力を妨げません)