- 作者: 鷺沢萠
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1990/11
- メディア: 単行本
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ともに、モラトリアムの男子を主人公とした二編。
二編の主人公とも、思春期特有の宙ぶらりんな空気がとても鮮やかで、なんだか、自分の昔のことを思い返してしまった。自分にはもちろんこの小説に書かれているようなDetachmentはなく、客観的にみたら「手堅い」人生を歩んできたんだけれども(それでも音楽のやりすぎで留年したりとか、そういうエピソードはあるが)やはりそういう「根無し草感」っぽい感情を味わったことはある。それは、そういう年代につきものの感情なのかもしれないが、すでに失われてしまった自分の昔を思い出し、ちょっとせつなくなってしまった。舞台になっている80年代末期〜90年代初頭は、自分がまさに過ごした時代であり、そういった雰囲気の懐かしさもある。どうにもあの時代は格好悪い時代だと思うけれども、でも自分が属した時代であることは否定できないよね。最もそういう時代性を感じるのが、著者近影だけれどもね。髪のはねかたが、80年代のおねえさんだよなあ。
小説としてとても優れているとは思わないが、(プロッティングという意味でね)、飲み会のあと独りで帰りながら夜空を見上げるときのような気持ちにさせられる小説でした。