- 作者: ナンシー関,リリー・フランキー
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/04/01
- メディア: 文庫
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嗚呼。もう彼女が死んで三年になるのか。
この対談も「Xデー」、つまり彼女の執筆が停止した日で終わっている作品だ。週刊誌で連載していたテレビ批評のシリーズも、文春文庫、朝日文庫のシリーズ両方ともXデーのところまで文庫化されているし、この本をもって、ナンシー関の連載は文庫化終了ということになるのか。
「Xデー」はサッカーのワールドカップで日本全体が盛り上がっていた頃のことだった。エッセイにも始まりかけていたワールドカップのことが書かれていて、それをみると終焉が近いことと否が応でも向き合わざるを得ず、ちょっとせつなく心臓がきゅっとなるような錯覚を抱く。
しかし、リリーフランキーとの対談はそうした「喪服気分」とは全く違って、かなり下らない呑気なテンションである。本人も死ぬつもりはないので当然だが、全く死ぬ予感など感じさせない下らなくも面白い話が、実に楽しそうではある。
テレビ批評エッセイは彼女のツッコミの「深さ」を堪能することができるが、対談本はまたそれとは違った雰囲気があって面白い。対談での彼女はツッコミが「速い」。瞬発力もある。(ほかに、ナンシーのツッコミの瞬発力を堪能できるのは、ナンシー関の記憶スケッチアカデミー (角川文庫)である)
で、ナンシーをツッコミ役と規定するとクレア対談本三連発の中では、リリー・フランキーが一番ボケ役としてかみ合っているように思いました。大月氏、町山氏との対談では、相手に対してのツッコミというよりは、両方ともツッコミで、世間の事象に対して二人でつっこんでいるような形式のようで。それゆえに、ナンシー氏も自分のエッセイで言っていたのと同じプロットを対談に持ち込んだりもしていた。リリー氏の対談は、ツッコミがリリー氏自体に向けられることが多く、エッセイにないナンシー氏の姿がうまく出ているように思います。