- 作者: レイ・ブラッドベリ,宇野利泰
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1975
- メディア: 文庫
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思ったよりさらっと読めた。
字体は小さく、時代を感じさせる。表紙の絵もなんだか濃い。1979の装丁のままなのだろうか。なんだか創元社の方にこうした時代がかった装丁が多いような気がするが、ハヤカワ文庫だった。
実は私この古典SF、今まで読んだことがなかったのだが、こんな有名な作品だから書評や他の作品解説など、ここかしこで引き合いに使われているせいか、初読でもうっすらと小説世界に既視感が感じられてしまう。
そのせいかこの小説が初めて上梓された時の読者のように新鮮な気持ちで読むことが出来ない。古典的な作品なので、プロットは単純だし、その部分にも見るべきものは少ない。二時間の映画にするにはちょうどいい程度の味の薄さだと思う。
ただ、「ああやっとこの有名な作品を通過したのだな」という感慨が残った。
えてして無感動を気取りやすいマニアらしい感慨だと自分でも思う。(困ったことにこうしたクローズドマインドは、鬱屈した二流のマニア特有のものなので、真のマニアはこうした無感動とは無縁だ)
でも、どうしても僕はこの小説に、新鮮な感動をもちかねたのだ。
僕はイマドキ珍しい「教養主義」を自認しているのだが、(もっとも『世界』も購読していないし、ニーチェも読まないので、旧制中学によくいた昔の『教養青年』からみると全く教養を語るなどおこがましいに違いない)プルーストとか、チェーホフとか、死ぬまでには読んでおきたい有名本を自分の中にリストアップしている。この華氏451もその一つではあったから、少なくとも「新鮮」であるわけはないよな。そうした態度が感動を生まなかったのかもしれない。
でもとりあえずノルマ一つ消化。
次は何を読もう。白鯨、くらいどうだろうか。