実は僕この人の作品、エッセイしか読んだことがない。『蛇を踏む』は立ち読みしたが、その掌編だけだ。エッセイは三冊めかな。
これも、いつものこの人のエッセイ。
しかしWeb上には、これくらいのクオリティのエッセイはごろごろしているよなぁ、と思って読んでいたのであるが、やはり出版されるものは、出版されるだけのクオリティを持っていると、途中で反省した。
といっても、この本にそういった凄みのオーラがでているわけではないのだけれど、なんでしょう、丸いのである。いわゆるハッとした表現や先鋭的な視点とか、そういうものではないが、丸いなら丸いで、徹底的に丸い。角を極端に落とし、表面を磨きあげているので、いくらなでてもつるりと柔らかい。それはそれでプロの技で、これが素人ウェブ文章なら、やはりどうしても仕上げに甘いところがあって、なでているうちにトゲがささったりしてしまうのだ。