- 作者: 小沼純一
- 出版社/メーカー: プチグラパブリッシング
- 発売日: 2006/09/01
- メディア: 単行本
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学生の頃は、教科書っていうのは全然好きではなかったけれども、教科書って、今思えば、広く浅く、しかし網羅的に解説をしてくれるわけで、とても便利な形式なんですよね。問題は今の教科書というものが、古いレジームで作られることで、例えば音楽の教科書などというのは、クラシックを中心とした西洋音楽史観を越えることがない。美術、音楽関係に関しては、いわゆるファイン・アートとサブカルチャーという分け方が当然であった時代から、一歩も進歩していないわけです。これは単純に既得権益層が作っているからだと思うが。
つまり教科書が面白くないのは、教科書という形式が問題なのではなく、教科書を作る人間の視座が面白くなく、現代の実情と随分乖離しているためである。このシリーズは、我々が生きているこの現代社会を、教科書という形で再構築したもの、なんでしょう。
以上制作者の思いを勝手に代弁してみました。ニューアカデミズムやね。
実際のところ、現代の音楽潮流をできるだけ公平に取り上げるというのはなかなか難しい事だ。この本はさりげない筆致ではありますが、そうした苦労のあとが窺えます。志が高いと思う。さまざまなアトラクタ(@グレッグ・イーガン)による勢力分布を、公平に取り上げることに、この本は限定的ではあるが成功しているように思われました。
自分はジャズ・ファンク・R&Bよりに音楽を聴いてきた人間なので、ロックの有名盤とか、クラシックもしくは現代音楽の方は結構手薄ですから、この本がそういう突破口になればいいと思った。
村上春樹『意味がなければスイングはない』とあわせて読んでおきたいところ(以前の感想→http://d.hatena.ne.jp/hanjukudoctor/20060109)