半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

Charles Mingus 『黒い聖者と罪ある女』

黒い聖者と罪ある女

黒い聖者と罪ある女

 僕にとってミンガスの音楽はどのような位置を占めているかといわれると、実はあまり語るような思い入れはない。常に僕の周りには、僕よりミンガスが好きな人が居て、ミンガス好きぶりを熱く語る彼のそれを、ふーん、いいなあと思って眺めていた記憶ばかりがある。
 特に、高校時代にかなりミンガスが好きな友達がいた。彼が色々貸してくれたので、自分ではあまりミンガスを買わなかった割には、相当マニアックなミンガスも聴いたことがあるのだ。カセットテープにダビングしたものは残っているけれど、今は再生できないので、端正込めて題字や曲目を手書きしたそれらのカセットは、今ではただの「懐かしい想い出箱」と成り果てている。
 その後、自分でもいくつかCDも買ったけれど、ミンガスは、人に貸したりして無くなることが多く、なぜか手元に残らない。Mingus mingus mingus mingus mingusなんて二回も買ったけど、二回とも無くした(Freedomという曲がすきなのだ)。どうも僕はミンガスと縁がないみたいだ。

 というわけで中古レコード店で久しぶりにミンガスを買った。正直、インパルスを買うことすら久しぶりかもしれない。
 このCDは、起伏からいうと、ハリウッド映画のようなはっきりした起承転結ではなく、なんとなく始まって、決して盛り上がらないわけではないが、なんとなく終わるという、まるで単館上映の文学映画みたいな作品。僕にとってはあまりわかりやすくないCDである。
 曲間の空気感を味に、「甘辛苦酸」に分類すると間違いなく苦であろう。もしくは苦よりの辛。

 ところで、ミンガスの作品の題名は、どれも「かっこいい」と思う。この題だって、まるで若者向けの劇団の公演名かおぼしきかっこよさだ。こういったけれん味は、たとえばオスピーには全然ない。